PNF
(PNF療法とのcombine療法)

PNFとは

PNFは米国の医師であり、神経生理学者でもあったハーマン・カバット博士が、理学療法士のマギー・ノットと共同で研究し、開発した身体に障害が起こって筋力が低下したり行動に制限がでたりしている人のためのリハビリテーションのための技術の一つです。英語のProprioceptive Neuromuscular Facilitationの頭文字を取ってPNFと呼ばれていますが、日本語では「固有受容性神経筋促通法」と呼ばれています。
Proprioceptiveとは、感覚受容器が刺激を受けることで温度や痛みを感じたり、自分の筋肉や関節などがどのような状態になっているかを目で見ることなく感じ取ったりすることです。感覚受容体は、視覚や聴覚、味覚といった特殊感覚、触圧や温度感覚、痛覚、筋や関節の動作などの体性感覚、内蔵の動作に関する内蔵感覚の3つに分けることができ、身体のあらゆるところに存在する神経終末などの細胞です。
Neuromuscularは脳の命令を身体の部分に伝え、身体の部分からの感覚を脳につたえる伝達機関である「神経」と身体を動かし、内蔵や関節を保護する「筋」に関することを指します。
Facilitationは促通、促進と訳され、脳や神経と筋の間の刺激の往復を促進し、身体の動作や機能が果たされやすい状況を作ることを意味しています。

PNFの仕組み

人間には全身に外部からの刺激を感得するための感覚受容器という細胞があります。適切な訓練を受けた施術者が、身体全体にある感覚受容器に熟達した手技で刺激を加える事によって脳にその刺激が伝達され、脳からはさらに刺激に対する応答がフィードバックされ、弱まっていた脳と神経、筋の結びつきが再び活性化し、本来持っていた運動機能を引き出していくことが可能になります。

PNFの原則

PNFは「障害のある人も含めて、すべての人の身体にはまだ引き出されていない潜在能力が眠っている」というカバット博士とノット理学療法士の理念を基に作られた以下の3つの原則によって構成されています。

  1. PNFは、身体の個々のパーツやどこか一か所だけの問題に対する処置だけではなく、一人の人間の身体や心全体に向けた統合されたアプローチとして実施する
  2. 常に前向きな姿勢で治療のアプローチを行い、身体と心の状態を考慮しながら被治療者ができることの範囲で強化していく
  3. 易しい行動から難度の高い行動へとだんだんと到達できるように被治療者を助けていくことが、すべての治療の第1のゴールである

こうした理念に基づいて、ポジティブで生理学に基づいた機能的なアプローチを行うことによって、施術者が患者に刺激を与えることで、高い治療効果を発揮できるようになります。

PNFの仕組み

脳の血管障害や、脊髄の損傷などから神経が障害されたり、筋力が低下したりすると、筋肉と脳との間の伝達性が弱くなります。そのために、動作をする際に痛みが起こったり違和感を覚えたりすることになるのです。
PNFでは、訓練を積んだ施術者が徒手によって、皮膚や筋、関節などほとんど身体中に備わっている感覚受容器に適切な刺激を与えることや、操作を加えることによって、筋や関節からの刺激を脳に伝え、脳から刺激に対するフィードバックが筋や関節に送られるというやりとりを促進し、弱まった脳と神経筋シナプス(筋肉と神経の接点)の結びつきを強化し、本来持っている運動機能を引き出すようにアプローチしていきます。

刺激を与える方法

施術者は、触覚に訴える、最適な抵抗を与える、関節に対する牽引や圧縮、筋肉や関節を伸長させる、パターンを使うといった刺激方法の他、必要に応じて聴覚や視覚などにも刺激を加えることで、機能回復を図っていきます。

広がるPNFの治療方法

カバット博士が、ポリオによる麻痺や運動機能低下の治療に役立てようとPNFを考案したという原点が示すように、本来は何らかの疾患や外傷によって神経麻痺や筋力の低下、関節可動域制限といった障害の改善や、日常生活に必要な運動機能を取り戻すために開発されたものです。泌尿器科においてもPNFトレーニングを応用することによって、機能性尿失禁など具体的な障害に対する治療だけではなく、様々な排尿症状の緩和のための理学療法に応用することも可能となっています。
また、近年ではこの考え方をさらに応用し、スポーツ医学の分野でも高度なスポーツ技術や向上のためのスキル獲得に追うようされるようになっています。

PNFと骨盤底筋群との関係

当院では、骨盤底筋群と上肢下肢、背筋、腹筋との関係について筋電図を用いた研究を行っています。
こうした体全体の筋肉との関連を検討することで、肛門を締める運動のみではなく、手足の運動を行うことで骨盤低をより強化をして行きます。そのためにPNFの運動療法の知識を活用して、より的確に関連する筋肉を同定し運動療法に応用していきます。また、インボディ測定などで筋肉量の測定を行いより希弱性の高い部分には運動療法を追加したり、スターフォーマーを活用しトレーニングを強化していきます。

新しい骨盤底筋群トレーニングの開発

現存する骨盤底筋群体操は、肛門を締める運動のみとなりますので、当院では全身を活用した尿失禁予防トレーニングを行っています。

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