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前立腺肥大症と射精機能の関係|治療法別の影響と機能温存のポイントを専門医が解説

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前立腺肥大症と射精機能の関係とは

前立腺肥大症の治療を考える際、多くの男性が気にされるのが「射精機能への影響」です。排尿症状の改善は重要ですが、性機能の温存も生活の質を維持するうえで欠かせない要素となります。

本記事では、前立腺肥大症と射精機能の関係について、治療法別の影響と機能温存のポイントを詳しく解説します。泌尿器科専門医として、患者さんが適切な治療選択をするための情報を提供いたします。

前立腺肥大症が射精機能に与える影響

前立腺は膀胱の出口で尿道を取り囲むクルミ大の臓器です。精液の一部である「前立腺液」を産生し、射精時に精液を尿道内に押し出す重要な役割を担っています。

前立腺肥大症そのものによって、射精時の感覚が弱くなったり、痛みを伴うことがあります。これは肥大した前立腺による圧迫が、射精に関わる神経や筋肉に影響を与えるためと考えられています。

前立腺肥大症の進行段階によっても影響は異なります。

第1期(膀胱刺激期)における影響

前立腺が肥大し始める初期段階では、射精機能への直接的な影響は比較的少ないとされています。ただし、頻尿や尿意切迫などの排尿症状が現れ始めます。夜間に3回以上トイレに起きるようになったり、尿が間に合わない感じが出てくることもあります。

第2期(残尿発生期)における影響

前立腺の肥大が進むと、尿道を圧迫するため排尿後も残尿が生じます。この段階では射精時の違和感や満足感の低下を訴える方が増えてきます。お腹に力を入れないと尿が出ない状態になり、日中や夜間の頻尿も強くなる傾向にあります。

第3期(慢性尿閉塞期)における影響

さらに肥大が進行すると、排尿力の低下と尿道の狭窄が起こります。この段階では射精機能への影響も顕著になることが多く、膀胱の収縮力が低下し、尿がだらだら漏れる溢流性尿失禁が起こることもあります。

生活習慣が前立腺肥大症に及ぼす影響

近年、前立腺肥大症の発症や進行には、加齢だけでなく食生活の欧米化が深く関与していることが分かってきました。高脂肪・高カロリーな食事は内臓脂肪の増加を招き、慢性的な炎症状態を引き起こします。この慢性炎症は前立腺組織にも波及し、細胞増殖や線維化を促進することで前立腺肥大を進行させる要因となります。さらに、肥満やインスリン抵抗性は男性ホルモンの局所代謝を変化させ、排尿障害や射精時の違和感、満足感の低下とも関連します。魚や野菜、大豆製品を中心とした和食に比べ、欧米型食事は前立腺への負担が大きいとされており、治療と並行して食生活を見直すことは、症状の進行抑制や生活の質の維持において重要なポイントです。

治療の種類ごとで射精にどんな影響が出るのか

前立腺肥大症の治療法は大きく薬物療法と手術療法に分けられます。それぞれの治療法が射精機能に与える影響について詳しく見ていきましょう。

薬物療法による影響

薬物療法では主に「α遮断薬」と「5α還元酵素阻害薬」が使用されます。α遮断薬は前立腺の筋肉を弛緩させ尿道の緊張を和らげる作用があります。一方で、逆行性射精を引き起こす可能性があります。

逆行性射精とは、射精時に精液が膀胱内に流れてしまう状態です。健康を害することはありませんが、射精時の満足感を低下させます。

5α還元酵素阻害薬であるデュタステリドは、前立腺の成長に影響を与える男性ホルモンの作用を減少させ、前立腺を小さくする働きがあります。こちらも射精機能に影響を及ぼす可能性があります。

従来の手術療法による影響

経尿道的前立腺切除術(TURP)やホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)などの従来の手術療法は、排尿症状の改善に効果的です。しかし、術後に射精障害が高い確率で合併します。

これらの手術では、前立腺組織を広範囲に切除または核出するため、射精時に膀胱の出口がうまく締まらなくなります。その結果、ほぼ必発で逆行性射精が起こります。また、前立腺の周りには勃起に関わる神経が網のように張り付いているため、手術の影響で勃起障害を生じることもあります。

性機能を温存する当院の治療法

近年、性機能の温存を重視した新しい治療法が登場しています。米国食品医薬品局(FDA)の臨床試験データに基づく包括的レビューによると、80cc未満の前立腺に対して、特定の治療法が永続的な性機能保持を実証しています。

前立腺尿道リフト(UroLift)の特徴

前立腺尿道リフトは、肥大による圧迫を尿道から特殊な糸で釣り上げる方法です。生体内で張力をかけながら機械的に前立腺尿道を開き、閉塞を解消させます。

30~80mLの比較的小さな前立腺肥大が対象となりますが、性機能の温存を希望する方には適した選択肢です。一泊入院でカテーテルが不要となることがほとんどで、患者さんの負担も少ない治療法です。

臨床試験により、UroLiftシステムは長期耐久性と効果の持続性をもたらすことが明らかになっています。インプラントは肥大した前立腺組織を引き戻す低侵襲手術によって、困難を伴う下部尿路症状に迅速な緩和をもたらします。

経尿道的水蒸気治療(Rezum)の特徴

2022年に保険適応となった経尿道的水蒸気治療(WAVE)は、水蒸気エネルギーを尿道から針で前立腺組織に注入する手術方法です。肥大だけを治療することができ、周囲の臓器に影響を与えない治療とされています。

射精障害の発生率は、TURPやレーザー治療に比べて低いと報告されています。比較的小さな肥大(30~80mL)で、性機能の温存を希望する方が対象になります。一泊入院で治療可能ですが、カテーテルが数日留置されることがあります。

治療法選択のポイント

適切な治療法の選択は、前立腺の大きさと形状、患者さんの出血リスク、症状の重症度、そして性機能への副作用に対する希望に基づいて決定されます。

前立腺の大きさによる選択

一般的な成人男性の前立腺の体積は通常20cc以下といわれています。水蒸気温熱療法(Rezum)および尿道吊り上げ術(UroLift)などの低侵襲手術療法は、比較的小さな前立腺肥大(30~80mL)でのみ適用可能です。

それ以上の大きな肥大(~300mL)はHoLEP(レーザー核出術)で対応します。さらに巨大な肥大(200-300mL以上)ではロボットを使用する前立腺摘除術が適応になることもあります。

出血リスクによる選択

前立腺は生殖器の一つであり、血流がかなり豊富です。出血リスクが高い患者さんに対しては、ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)が好ましいとされています。この治療は出血が低く、抗凝固・抗血小板療法を中断せずに行うことができることもあります。

性機能温存を重視する場合の選択

HoLEPでは射精障害が必発で、勃起障害をきたすこともあります。一方、RezumとUroLiftではこれらの性機能障害はほとんどみられず、機能温存が期待できるとされています。

80cc未満の前立腺に対して、AquablationとUroLiftは、治療後3年間において、射精機能と勃起機能の両方で永続的な性機能保持を実証することができました。性機能の温存を重視される方は、これらの治療法を検討する価値があります。

治療後の生活と注意点

治療後の生活において、いくつかの注意点があります。

尿漏れ(尿失禁)への対応

前立腺が大きくなることで尿を止める筋肉の働きが弱っていた場合、前立腺による閉塞を取り除いた後、逆に尿を止めにくくなることがあります。この場合は、骨盤底筋体操などに取り組んで、尿道を絞める筋肉を地道に鍛えることが重要です。

射精障害への理解

前立腺は精液の一部を作っており、精巣から精子を運ぶ精管は、前立腺の中を通って尿道に繋がっています。射精する時は膀胱の出口が締まる必要がありますが、前立腺肥大の手術方法によっては術後この出口がうまく締まらなくなるため、射精ができなくなることが多いです。

逆行性射精は健康を害することはありませんが、射精時の満足感を低下させます。治療法を選択する際には、この点を十分に理解し、担当医とよく相談することが大切です。

勃起障害への対応

前立腺の周りには、勃起に関わる神経が網のように張り付いています。そのため、前立腺の手術の影響でそれらの神経系にダメージが生じると、勃起障害を生じることがあります。内服の治療薬で改善することもありますので、症状がある場合などは担当医に相談しましょう。

まとめ

前立腺肥大症の治療において、排尿症状の改善と性機能の温存は両立可能な目標となってきました。従来の経尿道的前立腺切除術やレーザー治療は性機能障害のリスクが高いという課題がありましたが、新しい技術の登場により選択肢が広がっています。

特に80cc未満の前立腺肥大に対しては、AquablationやUroLiftなどの治療法が、射精機能と勃起機能の両方を治療後3年間保持できることが示されています。

治療法の選択は、前立腺の大きさ、出血リスク、症状の重症度、そして性機能への希望に基づいて決定されます。「加齢のせい」と放置せず、排尿に少しでも不安を感じたら、泌尿器科専門医に相談することが大切です。

当院でのED治療は、薬物治療に留まらず。高周波磁気治療やホルモン補充療法、レーザー治療など多岐に渡る治療を集学的に行っています。是非ご相談ください。

 

〈著者情報〉

泌尿器日帰り手術クリニック
uMIST東京代官山 -aging care plus-
院長 斎藤 恵介 

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