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年齢とともに弱りやすい膀胱を守るには? 血流を良くして排尿トラブルを防ぐ7つの方法

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年齢とともに膀胱が弱るのはなぜ? 加齢と排尿トラブルの深い関係をわかりやすく解説

年齢を重ねるとともに、トイレが近くなったり、尿意が我慢できなくなったりする経験をされる方は少なくありません。実は、こうした排尿障害の背景には、膀胱への血流低下が深く関わっています。

膀胱は尿を溜めて排出する重要な臓器ですが、その機能を維持するためには十分な酸素と栄養が必要です。加齢に伴い血管の機能が低下すると、膀胱組織への血液供給が減少し、さまざまな排尿トラブルが生じやすくなります。特に高齢者では、動脈硬化による骨盤内の血流障害が、過活動膀胱や排尿筋低活動といった症状を引き起こす主要因となることが明らかになっています。

本記事では、泌尿器科専門医の視点から、膀胱の血流改善によって排尿障害を予防・改善する具体的な方法を7つご紹介します。日常生活で実践できる対策から、医学的根拠に基づいた治療法まで、幅広くお伝えしていきます。

膀胱の血のめぐりが悪くなると何が起きるのか

膀胱への血液供給は、主に上膀胱動脈と下膀胱動脈から得られます。下膀胱動脈は内腸骨動脈に直接接続しており、膀胱壁全体に酸素と栄養を届ける役割を担っています。

歳を重ねると血管に起こる変化とは

加齢は血管機能の障害と密接に関連しており、分子レベル、細胞レベル、そして機能レベルでさまざまな変化が生じます。血管の老化は若年成人期から既に始まっており、40歳を迎える前から内皮機能の低下が現れ始めることが知られています。

血管の加齢変化の主な特徴は、内皮機能障害です。これにより血管のリモデリング、硬化の増加、コンプライアンスの低下、透過性の亢進、そして血管恒常性の喪失が引き起こされます。形態学的には、内膜中膜の肥厚や血管の肥大・過形成が生じ、細胞外マトリックスの再構成も伴います。

骨盤まわりの血流が悪くなると、膀胱も血のめぐり不足になる

骨盤動脈不全は、排尿筋過活動や過活動膀胱症候群などの膀胱機能障害の発症に重要な役割を果たします。動物実験モデルでは、骨盤動脈不全が膀胱壁の酸素張力低下を伴う重大な膀胱虚血を引き起こすことが示されています。

慢性的な虚血状態は酸化ストレスを生じさせ、酸化ストレス感受性遺伝子のアップレギュレーション、ムスカリン受容体活性の増加、超微細構造の損傷、神経変性を引き起こします。中等度の虚血は膀胱過活動を、重度の虚血は膀胱低活動を引き起こすことが研究で明らかになっています。

血流不足が原因で起こる排尿トラブルのサイン

膀胱への血流が低下すると、さまざまな排尿症状が現れます。これらの症状は、膀胱組織の酸素不足や栄養不足によって引き起こされるものです。

過活動膀胱症状ー急にトイレに行きたくなる・近くなる症状

急に起こる我慢できないような強い尿意を「尿意切迫感」と呼びます。この尿意切迫感を伴う頻尿が過活動膀胱の主な症状です。高齢の下部尿路症状患者では、無症候性の若年対照群と比較して膀胱血流が有意に低下していることが確認されています。

膀胱出口閉塞を伴う患者の膀胱組織では、低酸素誘導因子(HIF-1α)の高い免疫反応性が示されており、特に尿閉患者では免疫反応性細胞の数が多いことが報告されています。これは膀胱組織が慢性的な酸素不足状態にあることを示す重要な指標です。

排尿筋低活動への進行ー膀胱の力が弱っていく状態

慢性虚血関連の膀胱機能障害は、時間の経過とともに排尿筋低活動に進行する可能性があります。これは膀胱の収縮力が低下し、尿を十分に排出できなくなる状態です。

排尿筋低活動は、残尿の増加や排尿困難といった症状を引き起こし、患者様のQOLを著しく低下させます。こうした進行を防ぐためには、早期からの血流改善対策が重要となります。

血流改善による排尿障害予防・改善の7つの方法

膀胱への血流を改善し、排尿障害を予防・改善するための具体的な方法を、医学的根拠に基づいてご紹介します。

方法1:α1アドレナリン受容体遮断薬の活用

α1アドレナリン受容体遮断薬は、下部尿路への血流を増加させる効果があります。前立腺肥大症に伴う排尿障害の第一選択薬として広く使用されていますが、その効果は単なる平滑筋弛緩だけではありません。

動物実験では、α1遮断薬のシロドシンが慢性骨盤虚血モデルにおいて膀胱血流を増加させ、酸化ストレスマーカーを有意に減少させることが示されています。臨床研究でも、タムスロシンによる治療が下部尿路の灌流を有意に増加させることが確認されています。

これらの薬剤は、虚血誘発性の平滑筋収縮を弛緩させ、求心性シグナル伝達と酸化ストレスを減少させる作用を持ちます。膀胱血流の回復を通じて、慢性膀胱虚血による機能障害を改善する可能性があります。

方法2:PDE5阻害薬による血流改善

ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)阻害薬であるタダラフィルは、骨盤臓器の血流・灌流を増加させる効果があります。2014年に本邦で初めて前立腺肥大症に伴う排尿障害改善薬として承認されました。

動物実験では、慢性膀胱虚血ラットに対するダラフィルやミロデナフィルの投与が、膀胱機能と形態を保護し、膀胱過活動を減少させることが示されています。PDE5阻害薬は、求心性活動を調節し、cGMP/PKG活性をアップレギュレートする可能性があり、これらの複合的な作用が膀胱機能の改善につながると考えられています。

方法3:β3アドレナリン受容体作動薬の使用

β3アドレナリン受容体作動薬であるミラベグロンは、アデニル酸シクラーゼを刺激してcAMPを増加させ、平滑筋弛緩をもたらします。過活動膀胱の治療薬として広く使用されていますが、血流改善効果も期待されています。

動物実験では、慢性虚血ラットに対する8週間のミラベグロン治療が、膀胱機能と形態を保護し、膀胱過活動を減少させることが示されています。この効果はPDE5阻害薬と同等の有効性を示しており、虚血関連膀胱機能障害に対する治療選択肢として期待されています。

方法4:フリーラジカルスカベンジャーによる酸化ストレス対策

メラトニンなどのフリーラジカルスカベンジャーは、抗酸化作用を通じて膀胱機能と形態を保護します。慢性膀胱虚血では酸化ストレスが重要な病態メカニズムとなっているため、抗酸化物質による介入が有効と考えられます。

動物実験では、メラトニンの慢性投与が排尿間隔の延長と膀胱容量の増加をもたらし、酸化ストレスマーカーとNOS発現を有意に改善することが報告されています。ただし、使用された用量は非常に高く、ヒトへの応用については今後の研究が必要です。

方法5:生活習慣の改善による血管機能の維持

動脈硬化の危険因子である高血圧、脂質異常、喫煙、糖尿病は、下部尿路症状と密接に関連しています。これらの危険因子を管理することで、骨盤内の血流を維持し、膀胱機能の低下を予防できる可能性があります。

禁煙、適切な血圧管理、脂質コントロール、血糖管理といった基本的な生活習慣の改善が、長期的な膀胱機能の維持に重要です。特に喫煙は血管機能障害の主要な危険因子であり、禁煙は膀胱血流の改善に直接的な効果をもたらすと考えられます。

方法6:適度な運動による骨盤内血流の促進

定期的な運動は全身の血管機能を改善し、骨盤内の血流も促進します。特に下半身の筋肉をよく動かすことで、骨盤内臓器への血液供給が増加することが期待されます。

半歩大股のウォーキング、足の小指の外側力を入れながら110度スクワットなど、当院では、筋電図を用いた検討で各体の筋肉部位を骨盤底を関連図けて新しい骨盤底筋群体操を確立しています。全身を使った腹腔の形を整える骨盤底筋体操は、膀胱周囲の血流改善に有効と考えられます。ただし、過度な運動は逆効果となる場合もあるため、ご自身の体力に合わせた適度な運動を継続することが大切です。当院では、専門の骨盤リハビリ理学療法士による40程度のセッションも可能です。

方法7:冷え対策による血流維持

体の冷えは血管を収縮させ、骨盤内の血流を低下させます。特に冬季には、手先・足先・腹部・腰部の保温が重要です。

厚手の靴下、腹巻、温かい飲み物の摂取などにより、体を温めることで骨盤内の血流が改善し、排尿症状の軽減につながる可能性があります。また、入浴による全身の温熱効果も、血流改善に有効です。

高強度高周波磁気治療による新しい膀胱トレーニングの可能性

当院では、高強度高周波磁気治療装置 スターフォーマーPRO を用い、膀胱血流・筋肉・神経に直接アプローチする新しい治療法を確立しました。この方法は uMISTオリジナルモードとして、世界に向けて発信しています。

従来の膀胱訓練では「尿を我慢する」方法が一般的でしたが、実はこの方法には限界があります。尿がたまると膀胱壁は引き伸ばされ、血流が低下し虚血状態になることが分かっています。

「我慢=鍛える」という従来の考え方とは異なる、新しい発想が求められてきました。

スターフォーマーPROを用いたuMIST独自の膀胱トレーニング

スターフォーマーPROは、

・1分間に約5万回の筋肉収縮

・体内10cm奥まで届く磁気刺激

を可能にする高出力磁気治療装置です。

この特性を活かし、uMIST東京代官山での検討を重ねることで、

今まで存在しなかった「膀胱を直接鍛えるトレーニング法」を開発しました。

その結果、低緊張性膀胱の方や、カテーテル留置が必要だった方でも、膀胱機能の改善により排尿状態が良好になるケースが増えています。

膀胱血流改善が注目される医学的背景

近年、膀胱血流の低下(慢性膀胱虚血)と酸化ストレスが、下部尿路症状の重要な原因であることが明らかになってきました。そのため、血流改善を標的とした治療戦略が注目されています。

動物実験では

・α1アドレナリン受容体遮断薬

・PDE5阻害薬

・β3アドレナリン受容体作動薬

・フリーラジカルスカベンジャー

といった薬剤が、膀胱機能の改善だけでなく、膀胱筋の収縮力低下や有害な構造変化を抑制する可能性を示しています。

これらの薬剤は作用機序が異なり、下部尿路症状や過活動膀胱が多因子性の疾患であることを裏付けています。今後は、これらの知見をヒトで検証する臨床研究が期待されています。

また、慢性的な膀胱虚血は、排尿筋過活動(過活動膀胱)から排尿筋低活動(低活動膀胱)へ進行する可能性があります。

早期から血流改善に取り組むことで、この進行を防ぎ、患者様のQOL維持に大きく貢献できる可能性があると考えられています。

まとめ:膀胱への血流を改善し、正常な排尿の働きを守る

加齢に伴う膀胱への血流低下は、さまざまな排尿障害の原因となります。骨盤動脈不全による膀胱虚血は、酸化ストレス、ムスカリン受容体活性の増加、神経変性を引き起こし、過活動膀胱や排尿筋低活動といった症状につながります。

幸いなことに、α1アドレナリン受容体遮断薬、PDE5阻害薬、β3アドレナリン受容体作動薬などの薬物療法に加えて、生活習慣の改善、適度な運動、冷え対策といった日常的な取り組みによって、膀胱血流を改善し、排尿機能を維持することが可能です。

排尿に関するお悩みがある方は、早めに泌尿器科専門医にご相談ください。適切な診断と治療により、快適な日常生活を取り戻すことができます。

 

〈著者情報〉

泌尿器日帰り手術クリニック
uMIST東京代官山 -aging care plus-
院長 斎藤 恵介 

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参考文献

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