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女性の尿失禁~原因と対策がわかる完全ガイド

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女性の尿失禁~知っておきたい基礎知識

「くしゃみをしたら漏れた…」「笑った拍子に下着が濡れた…」

こんな経験はありませんか? 実は、あなたが感じている不安や恥ずかしさは、多くの女性が共有している悩みなのです。40歳以上の女性の約半数が尿失禁を経験しており、決して珍しいことではありません。

尿失禁とは、自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまう症状です。女性は男性と比べて尿道が短く(3〜4cm程度)、さらに妊娠・出産や更年期によるホルモンバランスの変化で骨盤底筋が弱まりやすいという特徴があります。

この記事では、女性の尿失禁の原因から対策まで、泌尿器科専門医の視点から詳しく解説します。症状が軽いうちに適切な対処法を知ることで、多くの場合、改善が期待できるのです。

尿失禁の主な種類と特徴

尿失禁には主に3つのタイプがあります。自分がどのタイプに当てはまるかを知ることで、適切な対策を選ぶことができます。

腹圧性尿失禁

くしゃみ、咳、笑い、ジャンプなど、お腹に力が入った時に尿が漏れるタイプです。女性に最も多く見られる尿失禁で、特に出産経験のある方や更年期以降の女性に多いのが特徴です。

骨盤底筋の緩みが主な原因で、尿道を締める力が弱まることで発生します。通常は少量の尿漏れですが、日常生活に大きな影響を与えることがあります。

切迫性尿失禁

突然強い尿意を感じ、トイレに間に合わず漏れてしまうタイプです。膀胱が過敏に反応して勝手に収縮してしまうことが原因で、「過活動膀胱」の症状の一つとしても現れます。

年齢とともに増加する傾向があり、50代以降は腹圧性尿失禁より切迫性尿失禁や両方を併せ持つ混合性尿失禁の割合が増えていきます。トイレの回数が増えたり、外出時に常にトイレの場所を確認するなどの行動変化が見られることもあります。

混合性尿失禁

腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の両方の症状を持つタイプです。加齢とともに増加し、特に更年期以降の女性に多く見られます。

症状が複合的であるため、生活の質に与える影響も大きく、適切な診断と複合的なアプローチが必要になります。

女性に尿失禁が起こりやすい理由

女性は解剖学的な特徴から、男性よりも尿失禁を経験しやすい傾向にあります。その主な理由をいくつか見ていきましょう。

解剖学的な要因

女性の尿道は男性と比べて非常に短いため(女性は約3〜4cm、男性は約15〜20cm)尿を保持する機能が相対的に弱いです。また骨盤底筋群が開放構造になっており、子宮・膀胱・直腸を支える支持組織に負担がかかりやすいです。尿道を支える尿道支持組織(膣前壁・恥骨尿道靭帯など)が脆弱化すると、腹圧がかかったときに尿が漏れやすいという解剖学的な要因があげられます。

妊娠・出産の影響

女性は、妊娠・出産などの身体的な変化により、尿失禁が起こりやすい傾向があります。これは、骨盤底筋(こつばんていきん)やその周囲の支持組織がダメージを受けやすい構造であるためです。妊娠中は、ホルモンの影響で骨盤底の組織が自然にゆるみます。出産時には、膣を通る分娩によって骨盤底筋や神経、靭帯などが引き伸ばされたり損傷したりすることがあります。特に、出産回数が多い方(多産)や、吸引分娩・鉗子分娩(器械分娩)、大きな赤ちゃん(巨大児)の出産では、その負担が大きくなります。

出産後も、これらの組織は完全に元の状態まで回復しないことが多く、

その結果として、将来的に尿失禁を起こしやすい基盤が残ってしまうのです。

更年期・加齢による変化

加齢や閉経を迎えると、エストロゲン(女性ホルモン)の分泌が減少します。

これにより、膣や尿道の粘膜が薄く・乾燥しやすくなり、尿道のクッション作用が弱まることで尿漏れが起こりやすくなります。さらに、加齢に伴い骨盤底筋の筋力が低下することで、尿道を支える力が弱まり、腹圧(咳・くしゃみ・笑いなどの瞬間的な力)がかかったときに尿が漏れてしまうことがあります。また、全身の筋肉量が減る「サルコペニア」も尿失禁に関係しています。特に下半身や骨盤まわりの筋力低下は、尿道を閉じる力を弱め、尿漏れを悪化させる要因となります。

ホルモンと神経の関与

女性ホルモンであるエストロゲンは、膀胱や尿道の粘膜を健康に保ち、血流を促すことで排尿機能を安定させる重要な役割を担っています。しかし、閉経などでエストロゲンが減少すると、膀胱や尿道の粘膜が薄く乾燥し、結果として尿漏れや頻尿などのトラブルが起こりやすくなります。

また、出産や加齢の影響で、骨盤神経(特に陰部神経)がダメージを受けると、膀胱や尿道をコントロールする働きが乱れ、排尿機能の低下や尿失禁につながることがあります。つまり、ホルモンの減少と神経の障害が重なることで、女性の尿トラブルはより起こりやすくなるのです。

生活習慣とその他の要因

日常生活の中にも、尿失禁を悪化させるさまざまな要因があります。

まず、肥満は常にお腹の圧(腹圧)が高い状態をつくるため、咳やくしゃみなどで尿が漏れやすくなる「腹圧性尿失禁」を悪化させる原因となります。また、慢性的な咳(喘息・喫煙・COPDなど)や便秘も、腹圧を繰り返し上昇させることで骨盤底筋に負担をかけ、尿漏れを起こしやすくします。

さらに、遺伝的な要因として、結合組織が生まれつき弱い体質の方もおり、

これも骨盤底を支える力が低下しやすい原因のひとつです。

尿失禁の診断と検査

尿失禁の適切な治療を受けるためには、まず正確な診断が必要です。恥ずかしさから受診を躊躇する方も多いですが、専門医による適切な診断は症状改善の第一歩です。

診断の流れ

尿失禁の診断は、詳細な問診から始まります。いつから症状が始まったのか、どのような状況で尿漏れが起こるのか、日常生活にどの程度影響しているのかなど、具体的な症状について医師に伝えることが重要です。

次に、身体診察では骨盤底筋の状態や骨盤臓器の位置関係を確認します。特に女性の場合、骨盤臓器脱(膀胱脱や子宮脱など)を併発していることもあるため、総合的な評価が必要です。

尿検査では、尿路感染症などの他の疾患の可能性を除外します。感染症が原因で一時的に尿失禁症状が出ている場合もあるため、まずは基本的な検査から行います。

専門的な検査

初期評価で原因が特定できない場合や、治療に反応しない場合には、より詳細な検査が行われることがあります。

尿流動態検査は、膀胱の機能を詳しく調べる検査で、膀胱内の圧力や尿の流れ、尿道括約筋の機能などを評価します。特に切迫性尿失禁の場合、膀胱の過活動(排尿筋過活動)を確認するために有用です。

パッドテストは、尿漏れの量を客観的に評価する方法です。一定時間装着した吸収パッドの重量変化を測定することで、尿失禁の程度を数値化します。

排尿日誌をつけることも診断の助けになります。排尿の回数、量、尿失禁のエピソードなどを3〜7日間記録することで、症状のパターンや生活習慣との関連が明らかになることがあります。

尿失禁の効果的な対策と治療法

尿失禁は適切な対策と治療によって改善できる症状です。症状の種類や程度によって、最適なアプローチは異なりますが、まずは非侵襲的な方法から始めるのが一般的です。

インティマレーザー

当院では、外科的治療の一環として非切除型レーザー治療「インティマレーザー」を導入しています。インティマレーザーは、膣内や外陰部にレーザーを照射して粘膜を温め、コラーゲンの再生と血流の改善を促す治療法です。ホルモンを使用しないため、更年期以降のGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)の方にも安心して受けていただけます。レーザーの熱刺激により膣壁にハリが戻り、乾燥感・性交時の痛み・尿漏れといった不快症状の改善が期待できます。施術時間は約20〜30分で、痛みが少なく日帰り可能です。数回の治療で持続的な効果が得られる方も多くいらっしゃいます。

骨盤底筋トレーニング

骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操とも呼ばれます)は、腹圧性尿失禁に特に効果的です。骨盤底筋を意識的に収縮させることで、尿道を支える筋肉を強化します。ただし「お尻の穴を締める」だけの体操では十分ではありません。

骨盤底はお腹・背中・呼吸の働きと連動して体を支える重要な筋肉群であり、全身のバランスを整えながら鍛えることが大切です。

当院では、PNF(固有受容性神経筋促通法)を応用した骨盤底筋群トレーニングを導入しています。腹腔全体の形を整えながら、骨盤底を正しく使えるように導くことで、尿失禁や骨盤のゆるみ、不快感を根本から改善していきます。

さらに、専門トレーナーによる定期的な個別指導も受けられるため、自己流になりがちなトレーニングの効果を最大限に引き出すことができます。

合わせて読みたい:PNF理学療法で腹圧性尿失禁を改善する7つの効果

生活習慣の改善

日常生活の小さな変化が、尿失禁の症状改善に大きく貢献することがあります。

適切な水分摂取は重要ですが、過剰な水分摂取は避けましょう。また、カフェインやアルコールには利尿作用があるため、摂取量を控えめにすることで症状が軽減することがあります。

体重管理も重要なポイントです。過体重や肥満は腹部に余分な圧力をかけ、尿失禁のリスクを高めます。適正体重を維持することで、骨盤底への負担を軽減できます。

便秘の改善も見逃せません。慢性的な便秘は、いきむことで骨盤底に過度な圧力をかけるため、食物繊維の摂取や適度な運動で腸の動きを活発にすることが大切です。

薬物療法と医療機器

非侵襲的な方法で改善が見られない場合、薬物療法が検討されることがあります。

切迫性尿失禁には、膀胱の過剰な収縮を抑える抗コリン薬やβ3アドレナリン作動薬が処方されることがあります。これらの薬剤は膀胱の筋肉をリラックスさせる効果があります。

更年期以降の女性には、局所的なエストロゲン療法が効果的な場合があります。膣内に直接エストロゲンを投与することで、尿道周囲の血流を改善し、組織の弾力性を回復させます。

医療機器としては、膣内に挿入するペッサリーや電気刺激療法なども選択肢として考えられます。特に腹圧性尿失禁に対して、骨盤底筋トレーニングと併用することで効果を高めることができます。

外科的治療の選択肢

保存的治療で十分な効果が得られない場合、外科的治療が検討されることがあります。手術は症状の種類や重症度、患者さんの全身状態などを考慮して選択されます。

腹圧性尿失禁に対しては、中間尿道スリング手術が標準的な治療法となっています。尿道の下にメッシュテープを配置して支えることで、腹圧がかかった際の尿漏れを防ぎます。成功率は80%以上と高く、日帰り手術も可能です。

切迫性尿失禁に対しては、膀胱内へのボツリヌス毒素A注射が効果的な場合があります。過活動な膀胱の筋肉を一時的に弛緩させる効果があり、効果は約9〜12ヶ月持続します。

重症例や複雑な症例では、仙骨神経調節療法なども選択肢となります。これは膀胱と脳の間の神経信号を調整する治療法で、薬物療法で効果が不十分な場合に検討されます。

どの手術も利点とリスクがあるため、専門医とよく相談し、自分に最適な治療法を選択することが重要です。

尿失禁と上手に付き合うための日常生活の工夫

治療と並行して、日常生活での工夫も尿失禁と上手に付き合うために重要です。

外出時は、トイレの場所をあらかじめ確認しておくと安心です。スマートフォンのアプリなどを活用して、近くのトイレ情報を簡単に調べることができます。

適切な吸収パッドの使用も有効な対策です。尿漏れの量や頻度に合わせて、専用の尿もれパッドを選びましょう。生理用ナプキンとは吸収構造が異なり、尿特有のにおいにも対応しているため、専用品の使用がおすすめです。

衣類の選択も工夫のひとつです。暗めの色や柄物の服は、万が一の尿漏れが目立ちにくいというメリットがあります。また、着脱しやすい服装を選ぶことで、トイレでの動作がスムーズになります。

そして何より大切なのは、尿失禁を恥ずかしいことと捉えず、適切な対処法を知り、必要なら専門家に相談する前向きな姿勢です。多くの女性が経験する症状であり、適切な対策で改善できることを忘れないでください。

参考文献:女性の尿失禁

まとめ:尿失禁は改善できる症状です

女性の尿失禁は、加齢や妊娠・出産などによって起こる非常に一般的な症状です。40歳以上の女性の約半数が経験しており、決して珍しいものではありません。

尿失禁には主に腹圧性、切迫性、混合性の3つのタイプがあり、それぞれ原因と対策が異なります。自分の症状がどのタイプに当てはまるかを知ることが、適切な対策の第一歩です。

骨盤底筋トレーニングや生活習慣の改善など、まずは非侵襲的な方法から始め、必要に応じて薬物療法や外科的治療を検討するというステップが一般的です。

尿失禁は命に関わる病気ではありませんが、生活の質に大きく影響します。症状を我慢したり恥じたりせず、早めに専門医に相談することが大切です。適切な治療と対策によって、多くの場合、症状は改善し、より快適な日常生活を取り戻すことができます。

〈著者情報〉

泌尿器日帰り手術クリニック
uMIST東京代官山 -aging care plus-
院長 斎藤 恵介 

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