インティマレーザーとは?尿漏れ治療の新たな選択肢
尿漏れに悩む女性は想像以上に多いものです。特にくしゃみや咳、笑った時などに漏れてしまう腹圧性尿失禁は、40歳以上の女性の約40%が経験するとされています。
しかし、多くの方が恥ずかしさから受診をためらい、日常生活に支障をきたしながらも我慢している現状があります。
そんな女性の悩みを解決する新しい治療法として注目を集めているのが「インティマレーザー」です。切らない、痛みが少ない治療法として、多くの女性に希望をもたらしています。今回はそのインティマレーザーについて解説していきます。

インティマレーザー
インティマレーザーは、女性特有のデリケートな悩みを改善するための先進的なレーザー治療です。
FOTONA社が開発したこの技術は、ErYAG(エルビウムヤグ)レーザーを使用し、膣内および外陰部に360度照射することでコラーゲンの生成を促進し、組織をふっくらと再生させます。膣の引き締め効果だけでなく、粘膜の潤い改善効果や美白効果も持ち合わせた画期的な治療法です。
従来のCO2レーザー治療(例:モナリザタッチ)は粘膜表面にダメージを与えて細胞再生を促すため、痛みとダウンタイム(回復期間)が長い傾向がありました。
しかし、インティマレーザーは独自技術により粘膜表面を傷つけずに粘膜下層へ熱エネルギーを与えることができるため、痛みが少なくダウンタイムも短いのが特徴です。
この治療法は、特に腹圧性尿失禁(くしゃみや咳などで尿が漏れる症状)に対して効果的であることが、多くの臨床研究で示されています。
インティマレーザーの作用機序と効果
インティマレーザーはどのようにして尿漏れを改善するのでしょうか?
その秘密は、エルビウムYAGレーザーの特殊な作用にあります。このレーザーは、膣粘膜の温度を約60~65℃まで上昇させることで、表皮を切除することなく深部組織に熱効果をもたらします。
熱刺激により膣壁のコラーゲン産生が活性化し、組織が厚みと弾力を取り戻すのです。また、尿道周囲の支持組織も強化されるため、尿失禁などの改善にもつながります。
具体的には、以下のような効果が期待できます
- ・膣壁や尿道周囲組織のコラーゲン収縮と新生コラーゲン生成
- ・骨盤底支持構造の強化
- ・膣粘膜の厚みと弾力性の向上
- ・尿道のサポート機能の改善
これらの作用により、くしゃみや咳などで腹圧がかかった際の尿漏れが軽減されるのです。
臨床研究では、治療1ヶ月後には約32.5%の患者さんが尿漏れの症状が完全に消失したという結果も報告されています。
インティマレーザーの臨床効果 ~研究結果から見る有効性~
インティマレーザーの効果は、単なる謳い文句ではなく、科学的な研究によって裏付けられています。
腹圧性尿失禁に対するEr:YAGレーザー治療のパイロット臨床試験では、31の患者さんを対象に治療を行い、その効果を評価しました。
主要評価項目として国際失禁相談質問票(ICIQ-UI)スコアを測定したところ、ベースラインと比較して全てさのフォローアップ時点で統計的に有意かつ臨床的に意義のある改善が見られました。
- ・治療1ヶ月後:平均6.3ポイントのスコア減少
- ・治療2ヶ月後:平均5.3ポイントのスコア減少
- ・治療6ヶ月後:平均5.1ポイントのスコア減少
特筆すべきは、治療前は全患者に尿失禁があったのに対し、治療1ヶ月後には31人中10人(約32.5%)が尿失禁なし(ICIQ-UIスコア=0)となった点です。
また、残尿量も治療後に統計的に有意に減少し、会陰測定では改善傾向が見られました。
これらの結果から、非アブレーション性のSMOOTHモードEr:YAGレーザー治療(インティマレーザー)は、腹圧性尿失禁を持つ女性にとって有望な低侵襲性の非外科的治療選択肢であることが示唆されています。
インティマレーザー治療の流れと実際の施術方法
実際のインティマレーザー治療はどのように行われるのでしょうか?
治療は通常、以下のような流れで進みます:
尿漏れ治療の場合
- 1. 膣内や外陰部に麻酔クリームを塗り、尿道には麻酔ゼリーを塗布し効果が出るまで待機します。
- 2. 膣内へガラス管を挿入した後、膀胱部分(膣前壁)へレーザーを当てていきます。
- 3. 膣全周にレーザーを当てます。
- 4. 外陰部(尿道口付近)にもレーザーを当てていきます。
- 5. 尿道に専用の機器を挿入した後、照射を行います。尿道内レーザープローブで尿道に直接当てていきます。
尿道や膣、その周りの筋肉が強化されることで、尿漏れが軽減されるのです。
膣引き締めの場合
- 1. 膣内や外陰部に麻酔クリームを塗り、麻酔が効くまで待機します。
- 2. ガラス管を膣の中へ挿入し、膣全周にレーザーを当てていきます。
- 3. 外陰部(尿道口付近)にもレーザーを当てていきます。
膣引き締めの場合は3ステップのみで行うため、約20分程度で施術が終わります。一度だけレーザーを当てた場合でも効果が感じられますが、1〜2回の治療を受けることが推奨されています。
治療中の痛みについては、研究によると95%の患者さんがVASスケールで0(痛みなし)と報告しており、非常に快適な治療であることがわかります。
インティマレーザーの副作用と安全性
どんな医療行為にも副作用のリスクはつきものですが、インティマレーザーは比較的安全な治療法として知られています。
臨床研究では、重篤な有害事象は報告されておらず、観察された副作用はすべて軽度で一時的なものでした。
フォトナ社から報告された、インティマレーザー治療6施設、764例のデータによると、主な副作用とその発生率は以下の通りです。
- ・浮腫:100%
- ・術中の痛み:14.3%
- ・おりものの増加:5.4%
- ・術後の痛み:4.3%
- ・出血:3.75%
- ・一過性切迫性尿失禁:3.2%
これらの副作用はほとんどの場合、治療後48時間以内に消失します。
特に浮腫については全ての患者さんに見られますが、これは治療による正常な組織反応であり、心配する必要はありません。
術中の痛みについても、適切な麻酔を使用することで最小限に抑えられています。研究では95%の患者さんが痛みなしと報告しています。
治療後の注意点
インティマレーザー治療後は、以下のような点に注意することが推奨されています。
- ・治療後14日間は腹腔内圧の上昇を避ける
- ・治療後3日間はタンポンの挿入や性交渉を控える
- ・清潔を保ち、過度の運動は避ける
- ・おりものの増加や軽度の不快感があっても、通常は数日で改善する
副作用のリスクが極めて少ないため、妊娠を考えている方でも安心して受けていただける治療法です。また、手術ではないので術後はすぐに日常生活へ復帰できるのも大きなメリットです。
インティマレーザーが効果的な症状と適応
インティマレーザーは、尿漏れ以外にも様々な女性特有の悩みに効果を発揮します。
主な適応症状には以下のようなものがあります:
1. 腹圧性尿失禁
くしゃみや咳、笑ったときなどお腹に力が入った瞬間に尿が漏れてしまう状態です。出産や加齢で骨盤底の支持組織が緩むことで起こり、女性に多いお悩みです。
インティマレーザー照射で尿道周囲や膣壁を引き締めると、尿漏れの頻度軽減が期待できます。
2. GSM(閉経後尿路性器症候群)
出産後や更年期以降に増える膣の乾燥感や性交時の痛み(性交痛)は、女性ホルモンの低下などで膣粘膜が萎縮し潤いが減ることが原因です。
インティマレーザーは粘膜に微細な熱刺激を与えることで膣粘膜の細胞再生を促し、コラーゲン豊富で潤いのある粘膜へと改善します。
3. 膣の引き締め効果
出産や加齢により膣がゆるんでしまうと、お湯もれや空気もれの原因になります。また、性交渉の満足度低下にもつながります。
インティマレーザーによる膣壁の引き締め効果で、これらの悩みを改善することができます。
4. 骨盤臓器脱の予防・改善
軽度の子宮脱や膀胱瘤などの骨盤臓器脱に対しても、インティマレーザーは効果を発揮します。膣壁全体を引き締め厚みをもたせることで、膀胱や子宮を下から支える力が強化され、臓器脱の進行を防ぐ効果が期待できます。
5. 外陰部の黒ずみ改善
VIO(デリケートゾーン)の黒ずみに対しても、インティマレーザーは美白効果を発揮します。
インティマレーザーと他の尿漏れ治療法の比較
尿漏れの治療法には、インティマレーザー以外にもいくつかの選択肢があります。それぞれの特徴を比較してみましょう。
1. 骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)
骨盤底筋を鍛えることで尿漏れを改善する方法です。費用がかからず副作用もないのがメリットですが、効果が出るまでに時間がかかり、正しい方法で継続する必要があります。
インティマレーザーと併用することで、より高い効果が期待できます。
2. 薬物療法
抗コリン薬や選択的β3アドレナリン受容体作動薬などの薬剤を使用する方法です。保険適用で費用が抑えられるメリットがありますが、口渇や便秘などの副作用が出ることがあります。
また、腹圧性尿失禁に対しては効果が限定的な場合もあります。
3. 手術療法(TVT手術など)
中部尿道スリング手術は、尿道の下に人工のテープを挿入して支える手術です。高い治療効果が期待できますが、全身麻酔が必要で、出血や感染、メッシュびらんなどの合併症リスクがあります。
また、将来の妊娠・出産を希望する女性には適さない場合があります。
4. インティマレーザー
非侵襲的で痛みが少なく、ダウンタイムも短いのが最大のメリットです。麻酔クリームを使用するため痛みは最小限で、安全に治療を受けられます。
妊娠を希望される方や出産経験のない方でも受けられる治療法です。ただし、保険適用外のため費用面での負担があります。
また、効果は永続的ではないため、定期的な治療が必要な場合があります。
インティマレーザー治療の費用と選び方
インティマレーザー治療は自由診療(保険適用外)となるため、クリニックによって料金設定が異なります。
一般的な費用の目安としては、尿漏れ治療の場合、1回あたり10万円〜15万円程度が相場です。膣引き締めのみであれば、やや安価になる場合もあります。
治療を受けるクリニックを選ぶ際は、以下のポイントをチェックするとよいでしょう。
- ・医師の専門性と経験(泌尿器科、婦人科、女性泌尿器科など)
- ・治療実績(症例数)
- ・使用している機器の種類と性能
- ・カウンセリングの丁寧さ
- ・アフターケアの充実度
- ・患者さんの口コミや評判
また、インティマレーザーは効果を持続させるために、定期的な治療が推奨される場合があります。長期的な治療計画と費用についても、事前にクリニックで相談することをおすすめします。
まとめ:インティマレーザーで尿漏れを改善し、QOLを向上させよう
インティマレーザーは、腹圧性尿失禁をはじめとする女性特有の悩みに対する、画期的な低侵襲治療法です。
臨床研究によって、その有効性と安全性が確認されており、特に以下のような特徴があります。
- ・非侵襲的で痛みが少なく、ダウンタイムも短い
- ・麻酔クリームの使用で痛みを最小限に抑えられる
- ・治療後すぐに日常生活に戻れる
- ・副作用が少なく、安全性が高い
- ・妊娠希望の方や出産経験のない方でも受けられる
尿漏れは決して珍しい症状ではなく、多くの女性が経験するものです。しかし、適切な治療を受けることで、大幅に改善することができます。
インティマレーザーによる治療は、尿漏れの悩みを解消し、日常生活の質を向上させる有効な選択肢の一つです。恥ずかしがらずに専門医に相談し、自分に合った治療法を見つけることが、より快適な生活への第一歩となるでしょう。
尿漏れに悩む女性が、この新しい治療法によって日常生活の制限から解放され、自信を取り戻せることを願っています。

〈著者情報〉
泌尿器日帰り手術クリニック
uMIST東京代官山 -aging care plus-
院長 斎藤 恵介