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夜間頻尿が続く方へ|泌尿器科専門医が考える原因といびき・睡眠の関係

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夜中に何度もトイレに起きる。朝までぐっすり眠れない。そんな悩みを抱えている方は少なくありません。

夜間頻尿の原因として、膀胱や前立腺の問題を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、実は「いびき」や「睡眠時無呼吸症候群」が背景に隠れているケースがあります。

泌尿器科では、排尿データを丁寧に確認し、膀胱や前立腺だけでなく睡眠の質まで含めて原因を整理します。夜間頻尿を改善するには、まず「なぜ夜に何度も起きるのか」を正しく理解することが大切です。

この記事では、泌尿器科専門医の視点から、夜間頻尿の原因といびき・睡眠時無呼吸症候群との関係、そして診断から治療までの流れを詳しくご紹介します。

夜間頻尿とは?定義と実態、寿命との関係

夜間頻尿とは、夜間に排尿のために1回以上起きなければならない症状を指します。

「1回くらいなら普通では?」と思われるかもしれません。実際、60代で1回、70代で2回程度であれば生理的な範囲とされています。しかし、夜中に2回以上トイレに起きる状態が続くと、睡眠の質は大きく低下します。

夜間頻尿は加齢とともに増加し、60歳代では約40%、80歳以上では約80%の方に認められます。多くの高齢者が経験する症状ですが、決して軽視すべきものではありません。

夜間頻尿は、転倒や骨折のリスクを高めるだけでなく、寿命(死亡率)にも関係することが分かっています。東北大学の研究では、70歳以上で夜間に2回以上トイレに起きる方は、1回以下の方に比べて骨折リスクが約2倍、死亡率が約1.6倍に上昇するという報告があります。

つまり夜間頻尿は、単なる加齢現象ではなく、全身の健康状態を反映する重要なサインともいえるのです。

「年のせい」と諦めず、原因を見極め、適切な対処を行うことが、健康寿命を延ばすうえで非常に重要です。

夜間頻尿の3つの主な原因

夜間頻尿の原因は、大きく分けて3つあります。それぞれの原因によって対処法が異なるため、まずは自分がどのタイプに当てはまるのかを知ることが大切です。

多尿・夜間多尿

夜間に作られる尿の量が多すぎる状態です。

通常、夜間は抗利尿ホルモン(バソプレシン)の働きで尿量が抑えられます。しかし、加齢や生活習慣の乱れでこのホルモンの分泌が減少すると、夜間でも多くの尿が作られてしまいます。

夜間多尿の判断基準として、65歳以上の方では24時間の尿量に対する夜間尿量の割合が33%を超える場合が目安となります。水分の過剰摂取、高血圧、心不全、腎機能障害、そして睡眠時無呼吸症候群などが原因となることがあります。

膀胱容量の減少

少量の尿しか膀胱に貯められなくなる状態です。

過活動膀胱では、膀胱に尿が少量しか溜まっていないのに強い尿意を感じてしまいます。男性の場合、前立腺肥大症によって膀胱が圧迫され、容量が減少することもあります。

このタイプは、昼間も頻尿になることが多いのが特徴です。トイレに急いで駆け込む「尿意切迫感」がある場合は、過活動膀胱の可能性が高いと考えられます。

睡眠障害

眠りが浅く、すぐに目が覚めてしまうために、目が覚めるごとにトイレに行くパターンです。

睡眠時無呼吸症候群や不眠症など、睡眠の質そのものに問題がある場合、夜間に何度も覚醒してしまいます。目が覚めると気になってトイレに行く、という悪循環に陥りやすいです。

実は、夜間頻尿の患者さんの多くに睡眠障害が隠れていると考えられています。膀胱や前立腺に問題がなくても、睡眠の質を改善することで夜間頻尿が軽減するケースは少なくありません。

いびきと睡眠時無呼吸症候群の関係

大きないびきをかく方は要注意です。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に呼吸が何度も止まったり浅くなったりする病気です。肥満体型の方や、顎が小さい方に多く見られます。

睡眠時無呼吸症候群の患者さんの90~98%が「いびき」の症状を持っています。逆に、慢性的にいびきをかく方の約30%に睡眠時無呼吸症候群が認められます。つまり、いびきと睡眠時無呼吸症候群は強く関係しています。

睡眠時無呼吸症候群になると、寝ている間に大きないびきをかいたり、寝相が悪くなって寝汗が増えたりします。また、何度もトイレに行きたくなって目が覚めてしまう方も多いです。

起床時の疲れや頭痛、日中の眠気で仕事や勉強に集中できないという症状がある方は、この病気の可能性があります。放置すると、高血圧、糖尿病、脳梗塞などのリスクが高まることがわかっています。

睡眠時無呼吸症候群が夜間頻尿を引き起こすメカニズム

なぜ睡眠時無呼吸症候群が夜間頻尿を起こすのでしょうか?

そのメカニズムは複数あります。

睡眠の質の低下と中途覚醒

睡眠時無呼吸症候群では、呼吸が止まるたびに脳が覚醒します。眠りが浅くなり、夜間に何度も目が覚めてしまいます。目が覚めると膀胱が敏感になり、少量の尿でも尿意を感じやすくなります。

中途覚醒は膀胱内圧の上昇を引き起こし、膀胱容量の低下をきたして尿意の原因となることが報告されています。つまり、睡眠障害そのものが夜間頻尿を悪化させる要因になっているわけです。

抗利尿ホルモンの分泌低下

通常、夜間は抗利尿ホルモン(バソプレシン)の分泌が増え、尿量が減ります。

しかし、睡眠時無呼吸症候群では睡眠中に低酸素状態が繰り返され、交感神経が過剰に働くため、このホルモンの分泌が減少します。その結果、夜間でも多くの尿が作られ、夜間多尿が起こります。

心房性ナトリウム利尿ペプチドの放出

睡眠中の無呼吸によって引き起こされる負の胸腔内圧変動も、夜間頻尿の原因と考えられています。

無呼吸時に胸腔内圧が低下し、静脈還流が増加します。心臓に戻ってくる血液量と圧力が増加すると、心臓が「体液が多すぎる」と勘違いし、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)を放出します。ANPは尿産生を増加させ、夜間頻尿の可能性を高めるます。

泌尿器科外来での診断プロセス

泌尿器科では、夜間頻尿の原因を正確に診断するために、いくつかのステップを踏みます。

問診と症状の確認

まず、就寝時刻や夜間の排尿回数、いびきの有無、日中の眠気などを詳しく伺います。

就寝時刻が早すぎて夜中に目が覚めてしまい、その都度トイレに行くという行動様式が常態化している高齢者は少なくありません。こうしたケースを最初の段階できちんと除外することで、効果の望めない治療を避けることができます。

排尿日誌の記録

排尿日誌は、夜間頻尿の原因を知るための重要なツールです。

朝起きてから翌日の朝まで、排尿した時刻とメモリ付コップなどで測定した排尿量を記録します。1回の排尿量と排尿回数を知ることで、おおよその原因を把握できます。

夜間の排尿の際に毎回十分な尿量を排尿する場合(おおよその目安として200-300ml)は多尿もしくは夜間多尿、十分な尿量を排尿しない場合(おおよその目安として100ml以下)は膀胱容量の減少が原因と考えられます。

尿検査・超音波検査・残尿測定

尿検査で膀胱炎などの感染症がないかを確認します。超音波検査では膀胱や前立腺の状態を観察し、残尿測定で排尿後に膀胱に尿が残っていないかをチェックします。

これらの検査で異常が見つからないケースでは、睡眠時無呼吸症候群が背景にある可能性があり、必要に応じて睡眠検査をご案内しています。

睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング

いびきや日中の眠気がある場合、STOP-Bang質問票を用いてスクリーニングを行います。

アイオワ大学医学部の研究では、泌尿器科外来を受診した男性患者18名を対象に在宅睡眠時無呼吸検査(HSAT)への紹介症状を分析したところ、患者の50%が勃起不全、56%が夜間頻尿、44%がテストステロン欠乏症、39%が性欲低下を報告していました。そして、HSATを完了した12名全員(100%)が閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)と診断されました。

この研究結果は、泌尿器科的症状を主訴とする男性患者において睡眠時無呼吸症候群が高頻度で診断されることを示しており、夜間頻尿が睡眠時無呼吸症候群のリスク評価において重要な指標となり得ることを示唆しています。

治療法と改善のアプローチ

夜間頻尿の治療は、原因に応じて異なります。

生活習慣の見直し

まずは生活習慣の改善から始めます。

  • 水分摂取量の調整:体重あたり20ml(体重60kgの方は1200ml)を目安に、夕方以降は水分控えめに
  • カフェインやアルコールの制限:利尿作用があるため、夜は控える
  • 適度な運動:夕方のお散歩が夜間頻尿を減少させる可能性があります
  • 就寝時刻の調整:適切な時刻に規則正しく就寝する生活を送ることで、夜間頻尿が改善する可能性があります

薬物療法

夜間多尿には、夜間の尿量を抑える薬(デスモプレシン)が使われます。過活動膀胱には抗コリン薬やβ3作動薬を、前立腺肥大症にはα1遮断薬やPDE5阻害薬を症状に合わせて処方します。

睡眠時無呼吸症候群の治療

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合、CPAP療法が第一選択となります。

CPAP(持続陽圧呼吸療法)は、睡眠中に鼻マスクを装着し、空気を送り込むことで気道を開いた状態に保つ治療法です。

CPAP療法により夜間頻尿の有病率が73.0%から51.5%に減少したという報告があります。また、CPAP療法開始後、33%の患者が睡眠状態や泌尿器科的症状の改善を報告しています。

CPAPに耐えられない場合は、レーザー治療のナイトレーズといった代替療法も検討されます。

関連記事:レーザー治療(ナイトレーズ)という新しい選択肢

よくある質問(FAQ)

Q1. 夜間頻尿で悩んでいますが、いびきもあります。何科を受診すればよいですか?

泌尿器科の受診をお勧めします。夜間頻尿というと泌尿器科と思われがちですが、実は泌尿器科では膀胱や前立腺だけでなく、睡眠の質まで含めて総合的に原因を評価いたします。いびきや睡眠時無呼吸症候群が夜間頻尿の原因となっているケースは少なくありません。泌尿器科では排尿日誌の分析や問診を通じて、いびきと夜間頻尿の関連性を評価し、必要に応じて睡眠時無呼吸症候群のスクリーニングも行います。実際に、アイオワ大学医学部の研究では、夜間頻尿を主訴に泌尿器科を受診した男性患者の100%に睡眠時無呼吸症候群が認められたという報告もあります。

Q2. 泌尿器科でいびきの治療もできるのですか?

泌尿器科では、いびきと夜間頻尿の関連性を診断し、適切な治療方針をご提案することができます。当院では、睡眠時無呼吸症候群が夜間頻尿の原因と考えられる場合、CPAP療法のご案内や、ナイトレーズといったレーザー治療などの選択肢をご提示しております。CPAP療法により夜間頻尿の有病率が73.0%から51.5%に減少したという報告もあり、いびきの治療が夜間頻尿の改善に直結するケースは多いのです。泌尿器科は「排尿の問題」だけでなく、その背景にある睡眠障害まで含めて対応できる診療科です。

Q3. 耳鼻咽喉科といびき外来、泌尿器科のどれを選べばよいですか?

夜間頻尿が主な症状である場合は、まず泌尿器科の受診をお勧めします。泌尿器科では排尿日誌を用いて夜間頻尿の原因を詳しく分析し、多尿・夜間多尿、膀胱容量の減少、睡眠障害のどれが原因かを特定します。その上で、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合はSTOP-Bang質問票などでスクリーニングを行い、必要に応じて専門的な睡眠検査や耳鼻咽喉科への紹介も行います。一方、いびきのみが気になる場合は耳鼻咽喉科やいびき外来が適しています。ただし、夜間に2回以上トイレに起きる方は、まず泌尿器科で総合的な評価を受けることが肝要です。

Q4. 前立腺肥大症の治療をしていますが、夜間頻尿が改善しません。いびきと関係がありますか?

関係がある可能性が高いです。前立腺肥大症の治療薬は膀胱容量の減少には効果がありますが、夜間多尿タイプの夜間頻尿には十分な効果が得られないことがあります。夜間頻尿の原因の約8割は夜間多尿であり、その背景に睡眠時無呼吸症候群が隠れているケースは少なくありません。泌尿器科外来を受診した夜間頻尿の男性患者の56%が夜間頻尿を報告しており、睡眠検査を受けた全員に睡眠時無呼吸症候群が認められたという報告もあります。現在の治療で改善が見られない場合は、担当医にいびきの有無や日中の眠気について相談し、睡眠時無呼吸症候群の評価を受けることをお勧めします。

Q5. 泌尿器科を受診する際、どのような準備をすればよいですか?

受診前に「排尿日誌」をつけていただくことを強くお勧めします。排尿日誌とは、朝起きてから翌日の朝まで、排尿した時刻とメモリ付コップなどで測定した排尿量を記録するものです。最低でも3日間、できれば1週間程度記録していただくと、夜間頻尿の原因を正確に診断するのに非常に役立ちます。また、いびきの有無、日中の眠気、起床時の頭痛や倦怠感、家族から呼吸が止まっていると指摘されたことがあるかなど、睡眠に関する情報もメモしておいてください。これらの情報があることで、より的確な診断と治療方針の決定が可能になります。

まとめ

夜間頻尿は、膀胱や前立腺の問題だけでなく、睡眠時無呼吸症候群が原因となっているケースがあります。

大きないびきをかく方、日中の眠気がある方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性を考えてみてください。泌尿器科では排尿データから原因を整理し、いびきや睡眠時無呼吸症候群が関与していないかも確認します。

適切な診断と治療により、夜間頻尿は改善できる可能性があります。「年のせい」と諦めずに、まずは泌尿器科にご相談ください。夜中にぐっすり眠って朝すっきりと起きる生活は、これからの人生を健康に過ごすカギとなります。

引用論文

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8252351/

 

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