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夜間頻尿の原因はいびき?睡眠時無呼吸症候群との意外な関係と知っておきたい6つの対策と治療法

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「夜中に何度もトイレに起きてしまう」「いびきがうるさいと言われる」こうした悩みを抱えている方は少なくありません。実は、夜間頻尿といびきには深い関係があることをご存知でしょうか。

一見すると無関係に思えるこの2つの症状ですが、背景には「睡眠時無呼吸症候群」という共通の原因が隠れている可能性があります。睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が何度も止まったり浅くなったりする病気で、日中の眠気や集中力低下だけでなく、夜間の頻尿を引き起こすことが医学的に明らかになっています。

この記事では、泌尿器科専門医の視点から、いびきと夜間頻尿の関係、睡眠時無呼吸症候群がなぜ夜間頻尿を引き起こすのか、そして具体的な対策と治療法について詳しく解説します。夜間頻尿でお困りの方、いびきを指摘されたことがある方は、ぜひ最後までお読みください。

夜間頻尿とは?意外と多い身近な症状

夜間頻尿とは、夜間にトイレに行くために1回以上起きなければならない症状を指します。

医学的には夜間に1回以上排尿のために起きる状態を夜間頻尿と定義しています。ただし、日常生活に支障をきたすレベルとなると、2回以上起きるケースが問題視されることが多いです。

夜間頻尿の有病率

総人口の約3割に夜間頻尿の有病率があるとされています。年齢が上がるにつれてその割合は増加し、50歳以上では約50%、70歳以上では60~80%の方が夜間頻尿を経験しているという報告があります。

性差では、若年者では女性に多く見られますが、中高年になると男性の方が多くなる傾向があります。これは前立腺肥大症などの男性特有の疾患が関係していると考えられています。

夜間頻尿が引き起こす問題

夜間頻尿は単に「トイレが原因で起きる」だけの問題ではありません。

睡眠の質が低下することで、日中の眠気や集中力の低下、疲労感といった症状が現れます。また、高齢者の場合は夜間に起きることで転倒のリスクが高まり、骨折などの重大な事故につながる可能性もあります。このように、夜間頻尿は生活の質(QOL)を大きく低下させる、見過ごせない症状なのです。

夜間頻尿の原因〜多尿と頻尿の違い

夜間頻尿の原因を理解するには、まず「多尿」と「頻尿」の違いを知ることが重要です。

多尿とは

多尿とは、尿量そのものが増加している状態を指します。健康な成人の1日の尿量は1,000-2,000mlとされています。これを超える場合は多尿と判断されます。

多尿の原因としては、水分の過剰摂取が代表的です。また、糖尿病では血液が濃くなるため、それを補正しようと水分を多く摂取するようになり、結果として多尿が起こります。アルコールやカフェインには利尿作用があるため、夜間にこれらを摂取しすぎると夜間多尿となります。

さらに、高血圧の患者さんでは夜間の血圧低下が不十分なため、夜間尿量が増加することが知られています。

頻尿とは

一方、頻尿とは尿量は正常でも排尿の回数が増加する状態を指します。膀胱に150~200ml程度の尿がたまると尿意を感じるのが通常ですが、頻尿の場合はそれより少ない量でも尿意を感じてしまいます。

男性の場合、前立腺肥大症によって排尿障害が起こり、残尿から頻尿となるケースが代表的です。また、膀胱が過敏になり頻回に尿意を感じる「過活動膀胱」も頻尿の主要な原因です。過活動膀胱は、脳卒中やパーキンソン病などの脳や脊髄の病気によって膀胱のコントロールが効かなくなる場合や、加齢による老化現象として起こることがあります。

夜間頻尿は両方が関係することも

実際の夜間頻尿では、多尿と頻尿の両方が合わさって起こることも少なくありません。そのため、原因を正確に見極めることが適切な治療につながります。

睡眠時無呼吸症候群と夜間頻尿の深い関係

ここからが本題です。

夜間頻尿の原因として、近年注目されているのが「睡眠時無呼吸症候群」との関連です。2020年に発刊された「夜間頻尿診療ガイドライン」でも、睡眠障害が夜間頻尿の原因として明記されています。

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が何度も止まったり浅くなったりする病気です。無呼吸もしくは低呼吸が1時間あたり5回以上起こる場合に診断されます。

肥満体型の方や顎が小さい方に多く見られ、大きないびき、夜間の頻尿、日中の眠気、起床時の頭痛などの症状を引き起こします。放置すると、高血圧症、脳卒中、心筋梗塞のリスクが約3~4倍高くなることが知られています。

睡眠時無呼吸症候群が夜間頻尿を引き起こすメカニズム

なぜ睡眠時無呼吸症候群が夜間頻尿を引き起こすのでしょうか。

その理由は複数あります。まず、睡眠中に無呼吸が起こると、上気道が閉塞して胸腔内圧が低下します。すると、陰圧に引っ張られるように心臓に帰ってくる血液量(静脈還流量)が増加します。これにより心臓の右房が拡張し、その負荷によって「心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)」というホルモンが産生されます。

ANPは利尿作用を持つホルモンで、これが分泌されることで夜間の尿量が増加するのです。さらに、睡眠時無呼吸症候群では高血圧症や糖尿病を合併する率が高く、これらも夜間多尿を引き起こす要因となります。

また、無呼吸のたびに脳が覚醒して呼吸を再開させるため、睡眠が浅くなり、わずかな尿意でも目が覚めやすくなります。このように、睡眠時無呼吸症候群は複数のメカニズムを通じて夜間頻尿を引き起こすのです。

研究が示すエビデンス

2019年に中国の天津医科大学が過去の181の論文をメタ解析した結果、閉塞性睡眠時無呼吸症候群のある人の夜間頻尿の有病率は1.4倍高く、無呼吸が重症になるほど夜間頻尿の有病率が高くなることが示されています。

また、良性前立腺肥大症(BPE)患者を対象とした研究では、BPE患者の57.8%が睡眠時無呼吸症候群の高リスクと判定されたのに対し、対照群では31.0%でした。さらに、夜間頻尿の回数と睡眠時無呼吸症候群のオッズ比には対数線形的な相関関係が存在し、夜間頻尿0回を基準(1.00)とした場合、1回で2.44、2~3回で5.75、3回超で12.3のオッズ比が報告されています。

いびきと睡眠時無呼吸症候群の関係

いびきは睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状です。

睡眠時無呼吸症候群の患者さんの90~98%がいびき症状を持っているとされています。逆に、慢性いびき症の約30%に睡眠時無呼吸症候群が認められるという報告もあります。このように、いびきと睡眠時無呼吸症候群は強く関連しているのです。

単純性いびきと閉塞性睡眠時無呼吸症候群の違い

ただし、すべてのいびきが睡眠時無呼吸症候群を意味するわけではありません。

睡眠時無呼吸を伴わない「単純性いびき症」の場合、夜間頻尿を引き起こす可能性は低いと考えられています。2018年にインドのAIIMS病院で行われた研究では、睡眠時無呼吸の指数が高いほど、血中酸素飽和度が低いほど、夜間頻尿の有病率が高いことが報告されています。つまり、睡眠時無呼吸の程度が重いほど夜間頻尿を起こす確率が高くなるのです。

「隠れ」睡眠時無呼吸症候群に注意

睡眠時無呼吸症候群は日中の眠気を起こすことが知られていますが、意外と日中眠気を感じていない「隠れ」睡眠時無呼吸症候群の患者さんも多いことがわかっています。

いびきは睡眠時無呼吸症候群のほとんどの患者さんが有している症状です。そのため、家族やパートナーからいびきを指摘され、かつ夜間頻尿がある場合は、睡眠時無呼吸症候群を疑って検査を受けることをお勧めします。

知っておきたい3つの工夫

夜間頻尿と睡眠時無呼吸症候群に対する対策と治療法をご紹介します。

1. 生活習慣の見直し

まず基本となるのが生活習慣の改善です。夕方から夜にかけての水分摂取量を適切にコントロールすることが重要です。過剰な水分摂取は夜間多尿の原因となります。

また、アルコールやカフェインには利尿作用があるため、夜間の摂取は控えましょう。塩分の多い食事も夜間尿量を増加させる要因となるため、減塩を心がけることも大切です。寝る前には必ずトイレに行く習慣をつけることも基本的ですが効果的な対策です。

2. 体重管理と減量

肥満は睡眠時無呼吸症候群の主要なリスク因子です。

体重が増加すると、首周りに脂肪が蓄積し、気道が狭くなります。減量することで気道の閉塞が改善され、睡眠時無呼吸症候群の症状が軽減する可能性があります。適度な運動と食事管理によって適正体重を維持することが重要です。

3. 睡眠姿勢の工夫

仰向けで寝ると、重力によって舌や軟口蓋が喉の奥に落ち込み、気道が狭くなります。

レーザー治療(ナイトレーズ)という新しい選択肢

近年、いびき治療の新たな選択肢として注目されているのがレーザー治療です。

中でも「ナイトレーズ(NightLase)」は、従来の外科手術とは異なり、切開を行わずにいびきの改善を目指す非侵襲的な治療法として関心が高まっています。

ナイトレーズ治療のメカニズム

ナイトレーズは、Er:YAGレーザーを用いて、軟口蓋や口蓋垂の粘膜にレーザーを照射する治療です。

レーザーの熱エネルギーによって組織が引き締まり、コラーゲンの生成が促進されることで、睡眠中に軟口蓋が緩んで気道を塞ぐのを防ぎます。

組織を切除せず、自然な収縮を促す点が大きな特徴で、切開や縫合が不要なため、身体への負担を抑えた治療が可能です。

ナイトレーズの効果と安全性

ナイトレーズの有効性は、臨床研究でも報告されています。

原発性いびき患者を対象とした試験では、治療後にいびきの程度やベッドパートナーによる評価が有意に改善した一方、偽治療群では明らかな変化は見られませんでした。

また、治療中の痛みは軽度で、局所麻酔を必要としないケースが多く、重篤な合併症の報告もありません。治療後すぐに日常生活へ戻れる点も特徴です。

ナイトレーズ治療の流れ

ナイトレーズ治療は日帰りで受けられる治療です。

施術時間は30~60分程度で、必要に応じてスプレーなどによる簡易的なのどの麻酔を行います。照射中は軽い熱感や刺激を感じることがありますが、強い痛みはほとんどありません。

治療は1か月に1回、計3回を基本とし、効果は徐々に現れます。その後は、いびきの状態に応じて半年~1年ごとのメンテナンス治療で効果を維持していきます。

実際の患者さんの例

Bさん(62歳・男性/会社員)

Bさんは、ここ数年「夜中に何度もトイレに起きてしまう」ことに悩まされていました。多い日は一晩に2~3回トイレに起きることもあり、そのたびに目が覚めてしまうため、朝起きても熟睡感がなく、日中は強い疲労感を感じるようになっていました。

日中の仕事では、「以前より集中力が続かない」「午後になると眠気が強い」と感じることが増え、年齢のせいだろうと思いながらも、次第に不安を覚えるようになっていったそうです。

また、奥様からは以前から「いびきが大きくて、途中で息が止まっているように聞こえることがある」と指摘されていましたが、Bさん自身には自覚がなく、深刻には受け止めていませんでした。泌尿器科を受診し、前立腺や膀胱の検査を受けましたが、大きな異常は見つかりませんでした。

薬による治療も試みましたが、夜間頻尿は十分に改善せず、「なぜ良くならないのだろう」という疑問が残ったままでした。

そんな中、夜間頻尿といびき、そして睡眠時無呼吸症候群の関係について知り、

「もしかすると自分の夜間頻尿も、睡眠が関係しているのではないか」と考えるようになったことが、受診のきっかけとなりました。

検査と治療後の変化 ― Bさんのその後

詳しい問診と検査を行った結果、Bさんには睡眠中の呼吸が浅くなる状態が繰り返し起きている可能性があることが分かりました。

当院で、いびきや睡眠時無呼吸症候群が夜間頻尿を引き起こす仕組みについて説明を受け、Bさんはこれまで点と点だった症状が、一本につながったように感じたといいます。

治療としては、生活習慣の見直しに加え、睡眠の質を改善するための治療を段階的に行うことになりました。無理のない方法から始められることもあり、Bさんは前向きに取り組むことを決めました。

治療を続けるうちに、

「夜中にトイレで起きる回数が少しずつ減ってきた」

「途中で目が覚めても、以前より再び眠りやすくなった」

といった変化を感じるようになりました。

それに伴い、朝の目覚めが少しずつ楽になり、日中の眠気やだるさも以前ほど気にならなくなっていったそうです。

ご家族からも

「いびきが前より静かになった」

「息が止まっているような感じが減った」

と言われるようになり、Bさん自身も睡眠の質が変わってきたことを実感されていました。

Bさんは「夜間頻尿は年齢や前立腺の問題だと思い込んでいましたが、睡眠が関係しているとは思っていませんでした」「もっと早く相談していればよかった」

と振り返られています。

現在も定期的に状態を確認しながら、夜間頻尿と睡眠の質の両面からのケアを続けています。

よくある質問(Q&A)

Q1.いびき(睡眠時無呼吸症候群)と、夜間のおしっこの回数はなぜ関係があるのですか?

睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に呼吸が何度も止まり、深い睡眠が妨げられます。その結果、夜間の尿量を抑える「バソプレッシン(抗利尿ホルモン)」の分泌が低下し、夜でも尿が多く作られてしまいます。さらに、低酸素状態が繰り返されることで心臓に負担がかかり、利尿作用を促すホルモンが分泌されやすくなるため、夜間に何度もトイレに行きたくなるのです。

Q2. いびきをかく人は必ず夜間頻尿になるのですか?

いびきをかくすべての方が夜間頻尿になるわけではありません。いびきには「単純性いびき症」と「睡眠時無呼吸症候群を伴ういびき」の2種類があります。夜間頻尿を引き起こすのは主に後者です。睡眠時無呼吸症候群では、無呼吸のたびに心臓への負荷が増し、利尿ホルモン(ANP)が分泌されることで夜間の尿量が増加します。ご家族から「いびきの途中で呼吸が止まっている」と指摘されたことがある方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性がありますので、一度検査を受けることをお勧めします。

Q3. 夜間頻尿を改善すればいびきも治りますか?

夜間頻尿を治療しても、いびきが自動的に改善するわけではありません。なぜなら、両者は「睡眠時無呼吸症候群」という共通の原因から生じている症状だからです。根本的な改善には、睡眠時無呼吸症候群そのものの治療が必要です。CPAP療法やナイトレーズなどのいびき治療を行うことで、睡眠時無呼吸が改善されれば、結果として夜間頻尿も軽減される可能性があります。つまり、いびきの治療が夜間頻尿の改善につながるケースが多いのです。

Q4. 日中眠気がないのですが、睡眠時無呼吸症候群の可能性はありますか?

はい、可能性はあります。実は「隠れ睡眠時無呼吸症候群」といって、日中の眠気をあまり感じない患者様も少なくありません。睡眠時無呼吸症候群の約90~98%の方にいびき症状があるため、家族やパートナーからいびきを指摘され、かつ夜間に2回以上トイレに起きる場合は、睡眠時無呼吸症候群を疑うべきサインです。日中眠気がなくても、朝起きたときの頭痛や倦怠感、集中力の低下などがある場合は、一度検査を受けられることをお勧めします。

Q5. いびき治療のナイトレーズで夜間頻尿も改善しますか?

ナイトレーズ治療によって睡眠時無呼吸症候群が改善されれば、結果として夜間頻尿も軽減される可能性があります。ナイトレーズは軟口蓋や口蓋垂の組織を引き締め、気道の閉塞を防ぐ治療法です。気道が確保されることで無呼吸が減少し、それに伴い利尿ホルモン(ANP)の過剰分泌が抑えられます。ただし、夜間頻尿の原因は複数存在するため、すべての方に効果があるとは限りません。前立腺肥大症や過活動膀胱など他の原因がある場合は、それぞれに対応した治療が必要です。

Q6. 睡眠時無呼吸症候群を放置すると、夜間頻尿以外にどんなリスクがありますか?

睡眠時無呼吸症候群を放置すると、夜間頻尿だけでなく、高血圧症、脳卒中、心筋梗塞のリスクが約3~4倍高くなることが知られています。無呼吸のたびに血中の酸素濃度が低下し、心臓や血管に大きな負担がかかるためです。また、日中の集中力低下や疲労感により、仕事のパフォーマンスが落ちたり、交通事故のリスクが高まったりすることもあります。夜間頻尿といびきは、こうした重大な健康リスクの警告サインとも言えます。早期発見・早期治療が重要ですので、気になる症状がある方は専門医にご相談ください。

まとめ〜夜間頻尿といびきは見過ごせないサイン

夜間頻尿といびきは、一見無関係に思える症状ですが、背景に睡眠時無呼吸症候群という共通の原因が隠れている可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群は、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の過剰分泌や睡眠の分断化を通じて夜間頻尿を引き起こします。また、放置すると高血圧、脳卒中、心筋梗塞などの重大な合併症のリスクが高まります。

「夜中に2回以上トイレに起きる」「いびきが大きい」「朝スッキリしない」といった症状がある場合は、泌尿器科や呼吸器内科を受診し、適切な検査を受けることをお勧めします。生活習慣の改善やCPAP療法などの適切な治療によって、夜間頻尿は改善し、生活の質を大きく向上させることができます。

睡眠は健康の基盤です。夜間頻尿やいびきを「年のせい」と諦めず、専門医に相談して根本原因を見つけることが、健やかな毎日への第一歩となります。

引用論文

PubMed「Nocturia and snoring: predictive symptoms for obstructive sleep apnea」

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