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夜間頻尿に悩む女性必見〜知られざる5つの原因と改善策

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夜間頻尿に悩む女性とは 原因とセルフチェックリスト

夜間、何度もトイレに起きることで悩んでいる女性は少なくありません。特に40代以降、この症状に悩まされる方が増えてきます。夜間頻尿は単なる不快な症状ではなく、睡眠の質を低下させ、日中のパフォーマンスにも影響を及ぼす重大な問題です。

私は泌尿器科医として多くの女性患者さんの夜間頻尿に向き合ってきました。患者さんからは「年齢のせいだから仕方ない」と諦めの声を聞くことも多いのですが、実はそうとは限りません。

夜間頻尿には様々な原因があり、適切な対策を講じることで改善できるケースが多いのです。本記事では、女性の夜間頻尿の原因と効果的な改善策について、最新の医学的知見をもとにご紹介します。

夜間頻尿とは?女性に多い症状の実態

夜間頻尿とは、国際排泄抑制学会の定義によると「夜間に1回以上排尿のために起きなければならない症状」を指します。

若い方の10~30%、高齢になると40~80%の方が経験する症状で、年齢とともに増加する傾向にあります。特に女性では、男性よりも比較的若い年代から症状が現れることが多く、40代から増え始め、50代から急増するのが特徴です。

夜間頻尿は単なる不便さだけでなく、睡眠不足による疲労から転倒リスクの増加にもつながります。ある研究では、夜間に2回以上排尿する高齢者は転倒リスクが10%から21%に増加することが示されています。

女性の夜間頻尿患者の約7割は夜間多尿(夜間に作られる尿の量が多い状態)があるとされています。また、過活動膀胱も年齢とともに増加するため、両者が重なっていることも多いのです。

女性の夜間頻尿を引き起こす5つの原因

夜間頻尿の原因は大きく分けて3つのカテゴリーに分類されますが、女性特有の要因も含めると、主に以下の5つが挙げられます。

1. 夜間多尿(ホルモンバランスの変化)

夜間多尿とは、夜間のみ尿量が多くなる状態です。65歳以上の方では、24時間の尿量に対する夜間尿量の割合が33%を超える場合に夜間多尿と判断されます。

女性の場合、特に更年期以降はエストロゲン(女性ホルモン)の減少により、抗利尿ホルモン(ADH)の分泌リズムが乱れることがあります。ADHは通常、夜間に多く分泌されて尿量を減らす働きをしますが、加齢とともにこの夜間のADH分泌が低下すると、夜間尿量が増えてしまうのです。

2. 膀胱容量の減少(過活動膀胱)

膀胱容量の減少は、少量の尿しか膀胱に貯められなくなる状態です。特に過活動膀胱の場合、膀胱に尿が少量しか溜まっていないにもかかわらず尿意を感じてしまったり、膀胱が勝手に収縮してしまったりします。

女性の過活動膀胱は、40代以降に増加し、特に出産経験のある方に多く見られます。骨盤底筋の弱化が原因となることが多いのです。

3. 骨盤臓器脱による膀胱形態の変化

女性特有の原因として、骨盤臓器脱があります。出産や加齢により骨盤底筋が弱まると、膀胱や子宮などの骨盤内臓器が下垂し、膀胱の形が変わることで尿の貯留機能に影響を与えることがあります。

膀胱瘤(膀胱が膣側に突出する状態)では、排尿後も尿が残りやすくなり、それが夜間の頻尿につながることがあります。

4. 睡眠障害

眠りが浅くてすぐ目が覚めてしまうために、目が覚めるごとに気になってトイレに行く場合もあります。

更年期以降の女性は、ホルモンバランスの変化により不眠に悩まされることが多く、これが夜間頻尿の原因となることがあります。また、高齢になると深い睡眠が減り中途覚醒が多くなりますが、この中途覚醒は膀胱容量の低下を招き、夜間頻尿につながります。

5. 全身疾患(心血管系の問題)

心不全や加齢による心機能低下は、日中立っている間に下半身に水分を貯留し浮腫につながります。夜間に横になると、この水分が血管に戻って血液量が増えるため、心臓から利尿ホルモンが分泌され、尿量が増加します。

また、高血圧や糖尿病、睡眠時無呼吸症候群なども夜間頻尿の原因となることがあります。特に睡眠時無呼吸症候群では、血漿心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)レベルの上昇を介して腎臓からのナトリウムと水の排泄を増加させ、夜間多尿を引き起こすことがあります。

夜間頻尿の原因を知るための自己チェック法

夜間頻尿の原因を特定するためには、排尿日誌をつけることが非常に有効です。排尿日誌とは、朝起きてから翌日の朝まで、排尿した時刻と排尿量を記録するものです。

排尿日誌から以下のことがわかります:

  • 日中の1回排尿量
  • 夜間の1回排尿量
  • 日中の排尿回数
  • 夜間の排尿回数
  • 飲水と排尿の関係
  • も分かり、排尿から見る生活習慣も分かり多くのデータが分析が可能です。

夜間の排尿の際に、毎回十分な尿量(おおよそ200-300ml)を排尿する場合は、多尿もしくは夜間多尿による夜間頻尿と考えられます。一方、十分な尿量を排尿しない場合(おおよそ100ml以下)は、膀胱容量の減少による夜間頻尿と考えられます。

また、夜間頻尿指数(Ni)という指標もあります。これは夜間尿量を機能的膀胱容量(排尿日誌で記録される最大排尿量)で割った値です。この値から予測夜間排尿回数を算出し、実際の夜間排尿回数との差を見ることで、夜間頻尿の原因が膀胱容量の減少なのか、夜間多尿なのかを判断する手がかりになります。

女性の夜間頻尿に効果的な5つの改善策

夜間頻尿の原因によって対策は異なりますが、女性に特に効果的な改善策をご紹介します。

1. 水分摂取の工夫

水分を摂ると約2時間後にその8割が尿になります。就寝3時間前からの水分摂取を控えめにすることで、夜間の尿量を減らすことができます。

また、カフェインやアルコールには利尿作用があるため、夕方以降の摂取は控えましょう。緑茶やウーロン茶、ほうじ茶にもカフェインは含まれていますので注意が必要です。

2. 塩分摂取の調整

塩分の摂りすぎは喉の渇きを引き起こし、水分摂取量の増加につながります。また、塩分(NaCl)を摂ると血液中のナトリウムが増え、腎臓がこれを排出するために尿量が増加します。

研究によると、低塩分食(1日6g以下)の方が高塩分食(1日12g以下)よりも夜間頻尿の回数が少ないことが示されています。うどんやラーメンの汁を飲まない、減塩調味料を使う、外食を控えるなどの工夫をしましょう。

インターソルト研究で代表的な研究例をいくつかご紹介致します。

ケース1

高塩分摂取の夜間頻尿患者

塩分制限群では夜間排尿回数・頻尿の改善が認められた。

ただし、24時間尿量を完全に追跡したかどうかや長期フォローについては限定的という記載。

→文献を見る

ケース2

「TOP-STAR」研究(多施設無作為化オープンラベル試験)

夜間排尿頻度を下げるための塩分低減効果を検証する試みの論文が公表予備・概要段階で確認されており、意図として「過剰ナトリウム摂取 → 夜間排尿」仮説を検証

→文献を見る

3. 骨盤底筋トレーニング

女性の場合、骨盤底筋を鍛えることで、頻尿・尿もれを改善することができます。特に出産経験のある方や更年期以降の女性は、骨盤底筋が弱っていることが多いため、トレーニングが効果的です。

基本的な骨盤底筋トレーニングは、肛門と膣を締めるように力を入れて5秒間キープし、その後5秒間リラックスするというものです。これを1日に10回程度、3セット行うことで効果が期待できます。

当院では、専門の理学療法士による骨盤リハビリとPNF療法を応用した新しい骨盤底筋群体操の提案をしております。

合わせて読みたい: PNF療法とは??

4. 就寝環境の改善

睡眠の質を高めることも夜間頻尿の改善につながります。寝室の温度や湿度を適切に保ち、騒音や光を遮断するなど、快適な睡眠環境を整えましょう。

また、就寝前のリラックスタイムを設け、スマートフォンやパソコンなどのブルーライトを発する機器の使用を控えることも効果的です。

5. 下肢のむくみ対策

日中に下肢にたまった水分が夜間に再吸収されることで夜間多尿を引き起こすことがあります。

午後遅くに30分程度、足を心臓より高い位置に上げて休むことで、下肢の水分を日中のうちに循環させることができます。また、弾性ストッキングの着用も効果的です。

医療機関での夜間頻尿の治療法

生活習慣の改善だけでは効果が不十分な場合は、医療機関での治療が必要になることもあります。

夜間多尿に対する治療

夜間多尿に対しては、デスモプレシンという薬が生活習慣や飲水習慣の改善後に使われることがあります。これは抗利尿ホルモン(ADH)の類似体で、夜間の尿量を減らす効果があります。

研究によると、デスモプレシンを投与された女性の46%で夜間排尿回数が50%以上減少したのに対し、プラセボ群では7%にとどまったという結果が出ています。

ただし、心不全のある方や高齢者では低ナトリウム血症などの副作用に注意が必要です。医師の指導のもとで適切に使用することが重要です。

過活動膀胱に対する治療

過活動膀胱に対しては、抗コリン薬やβ3作動薬などの薬物療法が行われます。これらは膀胱の過剰な収縮を抑える効果があります。

ソリフェナシンなどの抗コリン薬は、夜間頻尿のエピソードを統計的に有意に減少させることが示されています。

骨盤臓器脱に対する治療

骨盤臓器脱による夜間頻尿の場合は、ペッサリーの挿入や手術療法が選択肢となります。特に膀胱瘤が原因で排尿後も尿が残りやすい場合は、これらの治療が効果的です。

 

参考文献: https://journals.sagepub.com/doi/10.2217/17455057.2.4.647

まとめ:夜間頻尿は改善できます

夜間頻尿は「年齢のせいだから仕方ない」と諦めるのではなく、原因を特定して適切な対策を講じることが大切です。

女性の夜間頻尿の主な原因は、ホルモンバランスの変化による夜間多尿、過活動膀胱、骨盤臓器脱、睡眠障害、全身疾患などです。排尿日誌をつけることで、ご自身の夜間頻尿の原因を把握することができます。

水分・塩分摂取の工夫、骨盤底筋トレーニング、就寝環境の改善、下肢のむくみ対策などの生活習慣の改善で多くの場合は症状が軽減します。改善が見られない場合は、医療機関での適切な治療を検討しましょう。

夜間頻尿の改善は、睡眠の質を高め、日中の活動性を向上させ、転倒リスクを減らすなど、生活の質を大きく向上させます。ぜひ諦めずに、ご自身に合った対策を見つけてください。

質の高い睡眠は健康の基本です。夜間頻尿の悩みを解消して、朝までぐっすり眠れる日々を取り戻しましょう。

〈著者情報〉

泌尿器日帰り手術クリニック
uMIST東京代官山 -aging care plus-
院長 斎藤 恵介 

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