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排尿障害とは?症状から原因・治療法まで徹底解説

local_offer排尿障害

トイレに行っても尿が出にくい、夜中に何度も目が覚めてしまう。

こうした排尿に関する悩みを抱えている方は、決して少なくありません。「歳のせいだから仕方ない」と諦めてしまう方も多いのですが、実は排尿障害の背景には、治療可能な疾患が隠れていることがあります。

私は泌尿器科医として長年、排尿障害に悩む患者さんと向き合ってきました。適切な診断と治療によって、多くの方が快適な日常を取り戻されています。この記事では、排尿障害の基本的な知識から、最新の治療法まで、専門医の視点から詳しく解説していきます。

排尿障害とは何か?

排尿障害とは、膀胱に尿を貯めて排泄するという正常な排尿サイクルに異常をきたした状態のことを指します。

私たちの身体では、腎臓で作られた尿が膀胱に蓄積され、一定量に達すると尿意を感じて排尿するという仕組みが働いています。この一連の流れのどこかに問題が生じると、さまざまな症状が現れます。

排尿障害の2つの大きな分類

排尿障害は、大きく「蓄尿障害」と「排出障害」の2つに分けられます。

蓄尿障害

膀胱に尿をうまく貯めておけない状態です。通常、膀胱には300ml程度の尿を貯めることができますが、この機能が障害されると、頻繁にトイレに行きたくなったり、急な尿意に襲われたりします。夜間に何度もトイレで目が覚める「夜間頻尿」も、蓄尿障害の代表的な症状です。

排出障害

尿をスムーズに出せない状態を指します。尿の勢いが弱い、排尿に時間がかかる、お腹に力を入れないと出ない、といった症状が特徴的です。排尿後にまだ尿が残っている感じがする「残尿感」も、排出障害でよく見られる症状です。

男性と女性で異なる排尿障害の特徴

興味深いことに、排尿障害の現れ方は男性と女性で大きく異なります。

男性の排尿障害の特徴

男性の尿道は約20センチと長く、L字型にカーブしています。さらに前立腺という臓器に囲まれているため、加齢とともに前立腺が肥大すると尿道が圧迫され、「排出障害」が起こりやすくなります。実際、50歳以上の男性の約半数が前立腺肥大症の症状を経験すると言われています。

女性の排尿障害の特徴

対照的に、女性の尿道は3~4センチと短く、実は尿道はまっすぐの方と下向きの方がいます。膀胱や尿道は骨盤底筋という靭帯で支えられているだけなので、出産や加齢でこの筋肉が緩むと、尿道や膀胱の位置が変化し「蓄尿障害」「尿失禁」が生じやすくなります。くしゃみや重いものを持った拍子に尿が漏れる「腹圧性尿失禁」は、特に女性に多い症状です。

排尿障害の主な症状

排尿障害の症状は実に多彩です。

ご自身の症状がどのタイプに当てはまるか、確認してみてください。

蓄尿症状(尿を貯められない)

昼間頻尿は、日中起きている間に8回以上排尿する状態です。通常、健康な成人の排尿回数は1日4~7回程度ですから、これを大きく超えている場合は注意が必要です。

夜間頻尿は、夜間睡眠中に1回以上排尿のために起床することを指します。「夜中に2回以上トイレに起きる」という方は、生活の質が著しく低下している可能性があります。睡眠が分断されることで、日中の疲労感や集中力の低下にもつながります。

尿意切迫感は、突然起こる抑えきれない強い尿意のことです。トイレに慌てて駆け込む、という経験がある方も多いのではないでしょうか。この症状が進行すると、トイレに間に合わず尿が漏れてしまう「切迫性尿失禁」に至ることもあります。

排出症状(尿を出せない)

尿勢低下は、尿の勢いが弱くなる症状です。以前と比べて排尿に時間がかかるようになった、尿が途中で途切れる、といった変化を感じたら要注意です。

腹圧排尿は、お腹に力を入れて息まないと尿が出ない状態を指します。正常な排尿では、膀胱の筋肉が自然に収縮して尿を押し出しますが、この機能が低下すると腹圧をかける必要が出てきます。

残尿感は、排尿後もまだ尿が残っている感じがする症状です。実際に膀胱内に尿が残っている場合もあれば、膀胱の感覚異常で残尿感だけを感じる場合もあります。

排尿後症状

排尿後尿滴下は、排尿後に下着をつけてから尿が少し漏れてくる症状です。特に男性に多く見られ、尿道内に残った尿が後から染み出てくることで起こります。

これらの症状は単独で現れることもあれば、複数が同時に現れることもあります。症状の組み合わせによって、原因疾患を推測することができます。

排尿障害を引き起こす主な原因疾患

排尿障害の背景には、さまざまな疾患が潜んでいます。

前立腺肥大症

前立腺肥大症は、男性の排尿障害の最も一般的な原因です。前立腺は尿道を取り囲む臓器で、加齢とともに内側に向かって肥大していきます。すると尿道が圧迫され、尿の通り道が狭くなってしまいます。

症状としては、尿の勢いが弱い、排尿に時間がかかる、残尿感がある、といった排出症状が中心です。進行すると頻尿や夜間頻尿などの蓄尿症状も加わり、さらには尿が全く出なくなる「尿閉」という状態に至ることもあります。

前立腺肥大症は50歳以上の男性の約半数に見られ、年齢とともに増加します。ただし、前立腺が大きくても症状が軽い方もいれば、比較的小さくても強い症状が出る方もいます。当院では、前立腺の大きさだけではなく、形態的変化や膀胱との関係、内部構造にも目を向けて診断と加療を行います。

過活動膀胱

過活動膀胱は、膀胱が過敏になり、頻繁に強い尿意をもよおす病気です。尿がまだ十分に貯まっていないのに膀胱が収縮してしまうため、尿を充分にためておくことができません。

脳卒中やパーキンソン病などの神経疾患が原因となることもあれば、骨盤底筋のトラブルや前立腺肥大症に伴って発症することもあります。しかし、明確な原因が特定できないケースも少なくないです。このため当院では、閉鎖口診断や骨盤内血流にも目を向けて加療を行っております。

日本では40歳以上の約12%、実に800万人以上が過活動膀胱の症状を持つと推定されています。年齢とともに有病率は上昇し、80歳以上では約40%に達するという報告もあります。

神経因性膀胱

神経因性膀胱は、脳や脊髄、末梢神経の障害によって排尿機能が損なわれた状態です。脳卒中、脊髄損傷、多発性硬化症、糖尿病性神経障害など、さまざまな神経疾患が原因となります。

障害される神経の部位によって症状は異なりますが、膀胱の収縮力低下による排出障害や、膀胱の過敏性による蓄尿障害が生じます。糖尿病では、初期には膀胱の感覚が鈍くなり、進行すると膀胱の収縮力が低下して残尿が増えるという経過をたどることが多いです。

間質性膀胱炎

間質性膀胱炎は、膀胱に慢性的な炎症が起こる病気です。膀胱の粘膜だけでなく、その下の間質という層にまで炎症が及ぶため、膀胱の容量が減少し、強い頻尿や膀胱痛が生じます。

原因はまだ完全には解明されていませんが、膀胱粘膜のバリア機能低下、自己免疫反応、神経の過敏性などが関与していると考えられています。通常の膀胱炎と異なり、細菌感染は認められません。

興味深いことに、古代ペルシャの医学者アヴィセンナは、約1000年前に著した「医学典範」の中で、すでに間質性膀胱炎に類似した病態について記述していました。彼は膀胱の慢性炎症について、感染説や粘膜の異常、尿の異常、心理的要因など、現代医学にも通じる多角的な視点から考察しています。

尿路感染症

膀胱炎や尿道炎などの尿路感染症も、排尿障害の一般的な原因です。細菌が尿道から侵入して膀胱や尿道で繁殖すると、炎症によって膀胱が刺激され、頻尿や排尿痛、尿意切迫感などの症状が現れます。

特に女性は尿道が短いため、尿路感染症にかかりやすい傾向があります。適切な抗菌薬治療で比較的速やかに改善しますが、繰り返す場合は背景に他の疾患が隠れていないか確認が必要です。

当院の排尿障害へのアプローチ

排尿障害は、「尿が出にくい」「尿が近い」「夜中に何度も起きる」など、症状の現れ方がさまざまです。

そして重要なのは、症状が同じでも原因は一人ひとり異なるという点です。

当院では、排尿障害を単なる加齢や体質の問題と決めつけず、検査によって原因を整理し、状態に合った治療を選択することを重視しています。

排尿障害の原因を見極めるための検査

排尿障害の治療は、正確な評価から始まります。

当院では以下のような検査を組み合わせ、原因を多角的に判断します。

問診・症状評価

まず、現在困っている症状を詳しく伺います。

尿の勢、回数、夜間の排尿、残尿感、生活への影響などを整理し、

排出障害なのか、蓄尿障害なのかを見極めます。

排尿日誌・質問票による評価

排尿日誌や質問票を用いて、

・排尿回数

・1回の尿量

・夜間尿量

などを数値で確認します。

自覚症状だけではわかりにくい排尿パターンを把握するために重要な検査です。

尿検査・血液検査

感染症や血尿、腎機能の異常がないかを確認します。

排尿障害の背後に、他の疾患が隠れていないかを評価します。

超音波検査(エコー)

膀胱や前立腺の状態、残尿量を確認します。

前立腺肥大症の有無や程度を把握するうえで欠かせない検査です。

原因に応じた排尿障害の治療法

検査結果をもとに、排尿障害の原因に合わせた治療を選択します。

当院では「まずは低侵襲な治療から検討する」ことを基本としています。

薬物療法

排尿障害の初期治療として、薬物療法が選択されることが多くあります。

・前立腺肥大症による排出障害

・過活動膀胱による頻尿・切迫感

・夜間頻尿を伴うケース

など、それぞれの病態に応じて薬剤を使い分けます。

症状の変化を見ながら、用量や種類を調整していきます。

生活指導・行動療法

排尿障害は、生活習慣の影響を受けることも少なくありません。

・水分摂取のタイミング

・就寝前の飲酒やカフェイン

・排尿習慣の見直し

こうした点を調整するだけで、症状が軽減するケースもあります。

前立腺肥大症に対する低侵襲治療

検査の結果、前立腺肥大症が排尿障害の主な原因と判断された場合には、低侵襲治療も選択肢として検討します。

Rezūm(レジウム)治療

水蒸気を用いて前立腺組織を縮小させ、尿道の圧迫を軽減する治療です。

切開を伴わず、身体への負担を抑えた治療法として位置づけています。

関連記事:レジウム日帰り手術とは?治療の流れと安全性を専門医が徹底解説

UroLift(ウロリフト)治療

前立腺を物理的に持ち上げ、尿道を広げることで排尿を改善する治療です。

前立腺の形状や症状に応じて、適応を慎重に判断します。

関連記事:ウロリフト日帰り手術とは?治療の流れと安全性を専門医が解説

よくある質問(FAQ)

Q1. 排尿障害は年齢のせいだと思っていましたが、治療は可能ですか?

加齢によって排尿機能が変化することはありますが、すべてが年齢のせいとは限りません。

前立腺肥大症や過活動膀胱など、治療によって改善が期待できる疾患が原因となっているケースも多くあります。まずは原因を調べることが大切です。

Q2. 夜間頻尿も排尿障害に含まれますか?

はい、含まれます。

夜間頻尿は、蓄尿障害の代表的な症状の一つです。ただし、膀胱の問題だけでなく、前立腺肥大症や睡眠障害、生活習慣が関与していることもあります。原因に応じた対応が必要です。

Q3. 排尿障害の検査は痛みを伴いますか?

当院で行う検査の多くは、身体への負担が少ないものです。

問診、排尿日誌、尿検査、血液検査、超音波検査(エコー)などが中心で、基本的に強い痛みを伴う検査はありません。必要最小限の検査で評価を行います。

Q4. 薬だけで排尿障害は改善しますか?

症状や原因によって異なります。

軽度から中等度の排尿障害では、薬物療法や生活指導で改善するケースも多くあります。一方、前立腺肥大症が進行している場合には、低侵襲治療など他の選択肢を検討することもあります。

Q5. RezūmやUroLiftは、すべての排尿障害に適応できますか?

RezūmやUroLiftは、前立腺肥大症が原因の排尿障害(排出障害)に対する治療法です。

頻尿や夜間頻尿の原因が膀胱機能や他の疾患にある場合は、適応にならないこともあります。そのため、事前の検査と適応判断が重要です。

まとめ〜排尿障害で悩んだら

排尿障害は、適切な診断と治療によって改善できる疾患です。

「歳のせいだから」と諦めずに、まずは専門医に相談してみてください。症状の背景にある原因を明らかにし、一人ひとりに合った治療法を選択することで、多くの方が快適な日常を取り戻されています。

当院では、最新の診断機器と豊富な治療経験を活かし、患者さんの生活の質を向上させることを第一に考えた医療を提供しています。排尿に関するお悩みがあれば、どんな些細なことでも構いません。お気軽にご相談ください。

排尿障害について、さらに詳しい情報や専門的な診断をご希望の方は、ぜひ当院にお越しください。

引用論文https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19711283

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