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ウロリフト日帰り手術とは?〜生活への影響を最小限に抑える前立腺肥大症治療

local_offer前立腺肥大症前立腺肥大症の治療|Urolift(ウロリフト)

ウロリフト日帰り手術とは?

前立腺肥大症は、50歳以降の男性に多く見られる疾患です。

尿が出にくい、夜間に何度もトイレに起きる、残尿感がある......こうした症状に悩まされている方は少なくありません。従来の治療法では、薬物療法を続けるか、入院を伴う外科手術を選択するかという二者択一を迫られることが一般的でした。

しかし近年、「ウロリフト(UroLift)」という新しい選択肢が登場し、日常生活への影響を最小限に抑えながら、前立腺肥大症の症状を改善できるようになりました。

ウロリフトは、前立腺組織を切除したり加熱したりせず、小型のインプラントで肥大した前立腺を持ち上げて尿道を広げる治療法です。この方法は、米国泌尿器科学会と欧州泌尿器科学会のガイドラインで推奨されており、世界中で40万人以上の男性が治療を受けています。

本記事では、L.I.F.T study(前立腺尿道リフト研究)という大規模臨床試験のデータをもとに、ウロリフトがいかに生活への影響を抑えながら症状改善を実現するかを解説します。

前立腺肥大症とウロリフトの仕組み

前立腺肥大症とは

前立腺は膀胱の出口で尿道を取り囲む男性特有の生殖器官です。

加齢とともに前立腺が肥大すると、尿道が圧迫されて排尿障害が生じます。頻尿、夜間頻尿、排尿遅延、尿勢の低下、残尿感などの症状が現れ、日常生活の質を大きく損なうことになります。

ウロリフトの治療原理

ウロリフトは、デリバリーデバイスという専用器具を用いて、尿道から前立腺内に小型のインプラントを留置する治療法です。

インプラントは医療用の縫合糸で構成され、尿道側にステンレス製のストッパー、前立腺皮膜側にニチノール(ニッケルとチタンの合金)製のタブが付いています。このインプラントで左右の前立腺葉を結紮し、肥大した前立腺を外側に牽引することで尿道を拡張します。

通常、一人の患者様に4〜6個のインプラントを留置しますが、症例によっては最大10箇所まで対応可能です。

従来の手術との違い

経尿道的前立腺切除術(TURP)などの従来の外科手術では、前立腺組織を切除するため出血や術後の合併症リスクが存在しました。

一方、ウロリフトは組織の切開、加熱、切除を一切行わないため、体への負担が極めて少ないのが特徴です。手術時間も20〜30分程度と短く、従来の手術が2時間程度かかるのと比較して大幅に短縮されています。

L.I.F.T studyが証明した「生活への影響の少なさ」

L.I.F.T studyとは

L.I.F.T study(前立腺尿道リフト研究)は、北米とオーストラリアの19施設で実施された大規模な前向き多施設ランダム化二重盲検比較試験です。

50歳以上で国際前立腺症状スコア(IPSS)が12以上、最大尿流量率(Qmax)が12ml/秒以下、前立腺容積が30〜80ccの男性206名を対象に、ウロリフト群140名とシャム対照群66名に2:1の割合でランダムに割り付けられました。

この研究では、5年間にわたって症状の重症度、生活の質、性機能、有害事象などが詳細に評価されました。

驚異的な早期回復:平均8.6日で日常活動に復帰

L.I.F.T studyの5年追跡結果によると、ウロリフト治療後、患者は平均8.6日で術前の身体活動レベルに戻ることができました

これは従来の前立腺切除術と比較して驚異的に短い回復期間です。TURPなどの従来の手術では、完全な回復まで数週間から数ヶ月を要することも珍しくありません。

2週間で症状が大幅改善

さらに注目すべきは、治療後わずか2週間で症状と生活の質が有意に改善された点です。

L.I.F.T studyでは、ウロリフト群の国際前立腺症状スコア(IPSS)は、ベースライン22.1から2週間後には18.0へと減少しました。この早期改善は、日常生活への影響を最小限に抑える上で極めて重要な要素です。

3ヶ月時点では、ウロリフト群のIPSS改善度はシャム対照群と比較して88%も優れており(IPSS改善:ウロリフト群-11.1±7.67、シャム群-5.9±7.66、p=0.003)、主要評価項目を達成しました。

5年間持続する治療効果

L.I.F.T studyの長期追跡調査により、ウロリフトの効果が5年間にわたって持続することが証明されました。

5年時点での改善率は以下の通りです:

  • IPSS(症状スコア):36%改善
  • QOL(生活の質):50%改善
  • BPHII(前立腺肥大症影響指標):52%改善
  • Qmax(最大尿流量率):44%改善

これらの数値は、ウロリフトが単なる一時的な症状緩和ではなく、長期的な生活の質の向上をもたらすことを示しています。

性機能への影響がほぼゼロ〜生活の質を守る治療

勃起機能と射精機能の完全温存

従来の前立腺手術で患者が最も懸念するのが、性機能への影響です。

L.I.F.T studyの結果は、この点でも画期的でした。5年間の追跡期間中、新たな勃起機能不全や射精機能不全の報告はありませんでした。性機能は5年間にわたって安定して維持されました。

局所麻酔下で確実に実施できるウロリフトは、性機能を温存しながら、症状と尿流の迅速かつ持続的な改善を提供します。

TURPとの比較:BPH6研究が示す優位性

ヨーロッパ10施設で実施されたBPH6研究では、ウロリフトとTURP(経尿道的前立腺切除術)を直接比較しました。

その結果、症状改善の程度はTURPの方がやや大きかったものの、ウロリフトは以下の点で優れていることが示されました:

  • 回復の質
  • 射精機能の温存
  • 睡眠の質

特に性機能の温存は、多くの患者にとって治療選択の重要な判断材料となります。

術後のカテーテル使用を最小限に抑える治療

カテーテルフリー率93%という圧倒的な数値

前立腺手術後、多くの患者は一定期間尿道カテーテルの留置を必要とします。これは日常生活に大きな制約をもたらします。

しかしL.I.F.T studyによると、術後のカテーテル使用は最小限に抑えられ、30日時点で93%の患者がカテーテルフリーでした。

イングランドで実施された大規模な実臨床データ分析(2017年から2020年の間に80病院で実施された2,942件のウロリフト手術)でも、85.3%が日帰り手術として実施され、入院中の合併症発生率は3.4%と低く、最も多く報告された合併症は尿閉(1.4%)、次いで血尿・出血(0.9%)でした。

入院が不要な日帰り手術

ウロリフトの大きな特徴の一つが、入院を必要としない日帰り手術である点です。

従来のTURPでは通常数日間の入院が必要ですが、ウロリフトでは当日帰宅が可能です。これは仕事や家庭生活への影響を最小限に抑える上で極めて重要な要素となります。

ウロリフト日帰り手術の実際の流れ

当院でのウロリフト日帰り手術は、患者様の負担を最小限に抑えるよう設計されています。

術前の準備と検査

初回受診時には、問診と各種症状スコアのアンケートを実施します。排尿力ドックとして、尿流量測定、残尿測定、ホルモン採血、超音波検査などを行い、患者様の排尿障害の状態を詳細に把握します。

手術に向けては、感染症検査として感染症採血と尿培養検査を実施し、抗生剤の投与種類などを決定します。さらに、内視鏡検査と膀胱内圧測定により、前立腺内部の形態や麻酔方法を選択します。

手術当日の流れ

① バイタルチェック

手術当日は、まず体温や血圧などのバイタル測定から始まります。血圧が異常に高い場合や体温が37℃以上ある場合、安全性を最優先し手術を延期することがあります。

② 麻酔処置と安静時間

手術前には、尿道への局所麻酔や前立腺ブロックなどの麻酔処置を行い、約20分ほど安静にしていただきます。当院では局所麻酔を導入することで、麻酔による身体的負担を軽減し、ダウンタイムを最小限に抑えた治療を実現しています。

③ 手術時間と術後の休憩

手術そのものは約5〜10分で完了します。術後は10分ほどお休みいただき、その後の状態に応じて帰宅準備を行います。

④ 帰宅までの流れ

カテーテル留置の有無により帰宅手順が異なります。カテーテルが不要な場合は排尿していただき、残尿量の確認を行ったうえでご帰宅となります。

L.I.F.T studyが示す安全性プロファイル

軽度から中等度の一時的な有害事象

L.I.F.T studyでは、有害事象は軽度から中等度で一過性のものでした。

報告された症状には、尿失禁、尿路感染症、排尿困難、排尿痛、排尿時灼熱感、尿意切迫感、尿意制御不能、血尿、骨盤痛などがありましたが、これらの症状の多くは術後2〜4週間以内に消失しました。

5年間の再治療率

L.I.F.T studyの5年追跡調査によると、外科的再治療率は5年間で13.6%でした。

Intent to Treat(治療意図)群とPer Protocol(プロトコル遵守)群の間に差は見られず、治療効果の一貫性が確認されました。

ウロリフトのメリットとデメリット

ウロリフトの主なメリット

L.I.F.T studyのデータに基づくと、ウロリフトには以下の明確なメリットがあります:

① 生活への影響が最小限
  • 平均8.6日で日常活動に復帰
  • 2週間で症状が大幅改善
  • 日帰り手術で入院不要
② 性機能の完全温存
  • 新たな勃起機能不全の報告なし
  • 射精機能の完全温存
  • 5年間にわたって性機能が安定
③ 術後カテーテル使用の最小化
  • 30日時点で93%がカテーテルフリー
  • 従来の手術と比較して大幅に低い留置率
④ 長期的な効果の持続
  • 5年間にわたって症状改善が持続
  • 生活の質が50%改善し維持
⑤ 薬物療法からの解放
  • 前立腺肥大症に対する服薬継続が不要になる可能性
  • 薬の副作用から解放される

考慮すべきデメリットと注意点

一方で、すべての患者様に適応できるわけではありません。

① 適応条件の存在

前立腺が極端に大きい場合(100ccを超える)や特定の形状をしている場合は、この手術が適していないことがあります。尿路感染症に罹患している患者にも使用できません。

② 日本における保険適用の制限

日本では、ウロリフトの保険適用範囲が限られており、特に若年層は保険適用が難しくなっています。初回診察時に保険適応での手術が可能かどうかお伝えさせていただきます。

③ 再治療の可能性

ウロリフトを行っても、前立腺が再び肥大する可能性があり、5年間で13.6%が再治療を必要としました。ただし、前立腺内に埋め込んだインプラントは後から抜くことができ、他の治療を試みることも可能です。

ウロリフトがおすすめの患者様

L.I.F.T studyのデータに基づくと、ウロリフトは以下のような方に特に適しています:

① 早期の社会復帰を希望する方

平均8.6日で日常活動に復帰できるため、仕事や家庭生活への影響を最小限に抑えたい方に理想的です。

② 性機能を温存したい方

勃起機能や射精機能の完全温存が証明されているため、性生活を重視される方に適しています。

③ 入院を避けたい方

日帰り手術で完結するため、入院による生活の中断を避けたい方に向いています。

④ カテーテル留置を避けたい方

術後のカテーテル使用が最小限に抑えられるため、術後の生活制約を減らしたい方に適しています。

⑤ 薬物療法の副作用に悩む方

長期間の薬物療法を続けているが効果が不十分な方や、副作用に悩まされている方にも選択肢となります。

L.I.F.T studyの対象患者の年齢中央値は69歳でしたが、3.7%の患者が50歳未満であり、若年層でも治療を受けることが可能です。

まとめ:生活への影響を最小限に抑える革新的治療

ウロリフト日帰り手術は、前立腺肥大症の治療において革新的な選択肢です。

L.I.F.T studyという大規模臨床試験により、ウロリフトが生活への影響を最小限に抑えながら、長期的な症状改善を実現することが科学的に証明されました。

主要なエビデンス:

  • 平均8.6日で日常活動に復帰
  • 2週間で症状が大幅改善
  • 5年間にわたって効果が持続
  • 性機能の完全温存
  • 30日時点で93%がカテーテルフリー
  • 日帰り手術で入院不要

当院では、ウロリフト実施施設として、豊富な経験と実績に基づいた治療を提供しています。前立腺肥大症の症状でお悩みの方、仕事や日常生活への影響を最小限に抑えたい方は、まずは外来でご相談ください。

患者様の病状、生活、年齢に合わせて最適な治療法をご提案させていただきます。

 

〈著者情報〉

泌尿器日帰り手術クリニック
uMIST東京代官山 -aging care plus-
院長 斎藤 恵介 

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参考文献1

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